タクシーが荷物を運ぶ!? 『貨客混載』で「物流の2024年問題」を解決へ 専門家「新しい輸送手段」

タクシーが荷物を配送!?

4月1日、トラックやタクシーなどのドライバーの時間外労働に上限が設けられます。これによって懸念されているのが物流の輸送能力の減少、いわゆる「物流の2024年問題」です。この問題の解決に繋げようと、様々な取り組みが始まっています。キーワードは「貨客混載」です。

タクシーが個人向けの荷物を運ぶ

ドライバーの時間外労働は年間960時間に

岐阜県大垣市のスイトタクシー。従業員のスマートフォンに送られてきたのは荷物の写真です。

スイトタクシー 石田吉忠 部長:
「7個ありましたんで、行きましょうか」

タクシーが向かったのは西濃運輸の倉庫。

西濃運輸 奥田賢一さん:
「こちらが貨客混載で配送する荷物です」

スイトタクシーがグループ会社の西濃運輸と取り組んでいるのが、タクシーによる荷物の配送。運ぶのは揖斐川町の個人向けの荷物です。

西濃運輸 保科信悟 副主任:
「ドライバーが人手不足なので、タクシーで配送してもらえるのはありがたい」

背景にあるのは2024年問題。4月1日、これまで設定されていなかったドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に設定されます。これにより、長距離や再配達などの荷物の輸送に複数のドライバーが必要になるため、人手不足による輸送能力の低下や輸送コストの上昇が懸念されています。何も対策を行わなかった場合、2030年時点で約35パーセントの輸送力が不足するという試算もあります。

メリットはタクシー会社にも…

スイトタクシー 石田吉忠 部長:
「1日のうち6割くらいは、お客さんが乗っていない。空いた時間で荷物を運べるのでとてもよい。揖斐川町がこの辺り。再配達が発生したら、大垣北側でタクシー営業をしながら待機している」

タクシー営業の売り上げに加え、西濃運輸から配送料を得ることができ、経営の安定化につながります。

タクシーを活用する貨客混載について、専門家は…

物流コンサルタント 田代三紀子さん:
「(タクシーは)小回りもききますし、小口の配送であってもある程度の荷物でも運べるというところもあります。イレギュラー対応ですね。そういったところでも汎用が効くような扱い方が考えられると思います。特に医薬品であったり、治療に使うもの、手術に使うものとかそういったところが求められるところだと思います」

バスでイチゴを、新幹線で赤福を運ぶ…

高速バスで運ぶと費用が半分以下に

貨客混載の取り組みは様々な企業が進めています。その一つが、バスを使った貨客混載です。

岐阜県の東鉄バスは可児市で作られたイチゴを高速バスの荷台を使って東京駅まで運んでいます。イチゴを生産する中電ウィングの担当者によりますと、通常のトラック輸送と比べ、費用が半分以下になるということです。

このイチゴは電車の貨客混載で犬山駅にも運ばれています。

東海道新幹線でも「貨客混載」の取り組みが始まっています。

今月8日、名古屋駅のホームに運ばれてきたのは、伊勢名物の「赤福」です。積み込まれたのは、「新幹線こだま704号」。東海道新幹線を使った荷物輸送の実証実験です。

赤福は、「こだま」では使われないワゴン販売の商品スペースに積み込まれ、名古屋駅を出発。東京駅で上越新幹線に乗せかえられて新潟駅まで運ばれ、駅構内の小売店で販売されました。わずか5分で完売したということです。

JR東海事業推進本部・梶谷育郎担当課長:
「その日に運べるのは最大の強みだと思っている。こういう使い方があると潜在的な荷主に気付いてもらえれば、(2024年問題解決への)一つの選択肢として意義があると思っている」

新幹線を使った貨客混載はJR東日本ではすでにサービスが始まっていますが、東海道新幹線での取り組みは初めてです。JR東海は新幹線を使った法人向けの荷物輸送サービスを来月以降に始めるとしています。

そして赤福については、伊勢市の工場で作った商品の一部を、近鉄が名古屋駅まで運んでいます。

「空席」の有効利用で効率的な運送へ…貨客混載の課題は「量の制限や補償の調整」

新幹線で輸送される「赤福」

各地で進む貨客混載の取り組みは2024年問題解決の一手となるのでしょうか。

物流コンサルタント 田代三紀子さん:
「目を付けてなかった『旅客(サービス)』は、新しい輸送手段として今後伸びていくとは考えています。荷物が少ない、人が乗らなくて空席があるといった、それぞれの課題をうまく融合することで、収益が新たに得られることにもなりますし、効率的な運送もできるという形になります」

ただ、課題も…

物流コンサルタント 田代三紀子さん:
「一度に積める(荷物の)量に制限がかかる。新幹線の時間が遅れたときにどんな補償をするですとか、汚れたり破損したりした時の保険が対象になるとか、そういったところのいろいろな整備ですね」

一方で、荷物を受け取る側の課題もあると言います。

物流コンサルタント 田代三紀子さん:
「そもそも、なぜ残業がこれだけ物流業界において長くなるかっていうところが課題。(個人向け荷物の)再配達率がなかなか減らない。再配達するための時間がかかるというところも長時間労働に影響しますので、解消して行かないと根本的な2024年問題の解消にならない」

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