「拘置所の苦しみ、理解されず」 判決に元顧問長男、苦渋の表情

請求が棄却され、父の遺影を前に記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

 「拘置所での父の苦しみを、裁判所に十分理解してもらえなかった」。勾留中に判明したがんで死亡した「大川原化工機」の元顧問、相嶋静夫さん=当時(72)=の長男は、遺族側の請求を全面的に退けた東京地裁判決後に開いた記者会見で苦渋の表情を浮かべた。

 午後1時過ぎからの判決では、法廷で母、弟と並んだ。見詰めた裁判長が言い渡したのは、期待を裏切る「原告らの請求を棄却する」。「残念だ」と言葉をかけ合うのがやっとだった。

 相嶋さんは亡くなる数日前、鎮痛剤でもうろうとしながらも「寝るのが怖いんだよ。目が覚めないかもしれないから」と告げたという。長男は会見で「拘置所医療は、一般社会で病気になった人への治療に対する考え方とずいぶん違う。そのことを裁判所が追認してしまった」と唇をかんだ。

 2020年3月の逮捕後、容疑を否認し続けた相嶋さん。拘置所でがんが判明し、母は「うそでもいいから認めて保釈してもらって治療しよう」と言ったが、長男は「信念を曲げて亡くなるのはよくない」と入院先を探し回った。

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