収穫の秋のポイントは春 消費者が知らない「苗半作」 喜ぶ顔を見るために

3月も下旬を迎え、田植えに向けた苗づくりも始まりました。こんな言葉をご存知ですか? 「苗半作」… 苗の出来で作柄の半分が決まるというその重要性を示した言葉です。そんな消費者が知らないコメと野菜・果物、3つの苗づくりの現場をご紹介します。

広島県庄原市東城町にある藤本農園です。暖冬の影響で例年より1週間早くイネの苗づくりが始まりました。

藤本農園 藤本聡 社長
「これからイネの、ことしのおコメ作りがスタートするということです。いいコメ作らにゃいけんので正確にやっていきましょう。よろしくお願いします」

袋から取り出されたのは、コシヒカリの「種もみ」です。来月中旬から始まる田植えに向けてこの種もみで苗を作ります。その最初の作業が60℃の湯に10分間つけて病原菌を殺す温湯消毒です。

藤本聡 社長
「多すぎても煮えちゃうし、浅すぎても、もし水温が低くても発芽不良を起こしたりするので」

この作業…、ふつうは農薬を使います。農薬を使わない理由は、この農園ではアイガモ農法で無農薬のコメを作っているからです。

藤本聡 社長
「苗が健康でなければ、そのあと病気になりやすかったり、天候に負けたりとか。苗が順調に生育することがおいしいおコメの秘訣になろうかと思います」

湯で消毒したあとは、水に1週間あまり浸けて種まきを迎えます。実は、ことしの苗づくり…、暖冬で水源の山に雪が降らず、水不足の影響が心配されていました。

毎年のように起きる異常気象…。藤本さんは、ことしがどんな天気になっても対応できるよう準備したいと気を引き締めていました。

三次市下志和地町の白ネギ農園「アグリロアーラボ」です。

冬ネギの収穫が終盤を迎えた先月中旬、育苗器の中で秋に収穫するネギの苗づくりが始まっていました。種は4日前にまかれたもので、5ミリほどの芽が出ていました。

代表の藤谷さんが生育具合をチェックします。

アグリロアーラボ 藤谷祐司 代表
「苗の状態で2L、Lが決まってしまうと言われているので」

2L、Lとは太さの規格です。目標は、太さと使い勝手のよさで人気の2Lの生産です。

藤谷祐司 代表
「人間と同じだよと言われることがあるんですけど、やっぱり小さい時に体づくりをしとけば、大きくなっても元気だよねって考え方のもと、どれだけいい苗を作るか」

そのために専用の土まで取り寄せました。あれから1か月、育苗器の種はハウスの中で長さ6~7センチの苗に育っていました。

藤谷祐司 代表
「パッと見て、ピンと伸びて、いい生育状況かなというふうに思います。草丈がしっかりそろっているので」

藤谷さんは、2Lの生産に自信を深めていました。

藤谷祐司 代表
「うちですと、7割いかないくらいが2L。そこを90%以上でやっていきたいという目標で」

果たして、どんな収穫の秋を迎えるのでしょうか?

真っ赤に熟した「紅ほっぺ」。

福山市芦田町の「立花いちご農園」です。収穫作業中の今月初め、クリスマス用の「紅ほっぺ」の苗づくりが始まりました。ポットの苗は業者から1週間前に取り寄せました。この苗を親株にして1本あたり50本の苗を作ります。

代表の立花さんいわく、「苗八分作」です。

立花いちご農園 立花和磨 代表
「苗八分作いうくらい、苗づくりが一番重要な作業なんですよ。ここで病害虫とかにやられると、その一年がけっこうダメージが大きいですね」

イチゴの苗はとても病気に弱いそうです。この苗も無菌状態のフラスコの中で培養されました。苗を増やす過程で葉を間引きますが、キズがつくと病気になるそうです。目指すは太い苗づくりです。

立花和磨 代表
「クラウンという茎の部分が太め、太いがっちりした苗を作らないといけない。収量がとれないといわれているんですね。時間と手間がすごくかかります」

しかし、苗を植えた後も温度の変化などで生育が止まることがあるため、農園では2年前、ハウス内の環境を自動制御するシステムを導入しました。苦労の種が尽きないイチゴ栽培ですが、客の喜ぶ顔を見るのが立花さんのやりがいなのだそうです。

立花和磨 代表
「まだちょっと頼りない苗ですけど、しっかり大きくして、いいイチゴ作れるようにがんばります」

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