【連載コラム】第56回:2024年シーズンのMVP候補たち 昨季のトップ3をドジャース・大谷が追う

写真:MVP争いにおいては、DHに専念すると見られる大谷はやや不利か ©Getty Images

日本時間3月20日、韓国・ソウルの高尺スカイドームでパドレス対ドジャースの一戦が行われ、MLBの2024年レギュラーシーズンが開幕しました。先々週は新人王、先週はサイ・ヤング賞の行方を展望しましたが、今週は両リーグのMVP候補について見ていこうと思います。

まずはア・リーグから。MLB公式サイトでは日本時間3月21日午前6時の時点でのオッズを紹介していますが、トップ5は1位から順にフアン・ソト(ヤンキース)、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、フリオ・ロドリゲス(マリナーズ)、コリー・シーガー(レンジャーズ)、ヨーダン・アルバレス(アストロズ)という顔ぶれになっています(シーガーとアルバレスは4位タイ)。

ソトは今オフ、大型トレードでパドレスから移籍。メジャー6年間で出塁率が1度も4割を下回ったことがなく、2021年から3年連続メジャー最多四球、昨季は自己最多の35本塁打、通算OPS.946を誇る球界有数の強打者です。左打者に有利と言われるヤンキー・スタジアムを本拠地とするヤンキースへ移籍したこと、FA前のラストイヤーを迎えたことなどからキャリアハイの成績を残す可能性も十分にあり、その場合はMVP争いを独走することになるでしょう。

ジャッジは2022年にMVPを受賞した実力者。昨季は故障の影響で106試合しか出場できませんでしたが、それでも37本塁打、OPS1.019をマークしており、健康にフルシーズンを過ごすことができれば、MVP争いに絡んでくるのは間違いありません。ヤンキースの両主砲の争いとなるのか、それともロドリゲス、シーガー、アルバレスといった実力者たちが争いをリードしていくのか、大谷翔平がナ・リーグへ去ったあとのア・リーグMVP争いは要注目です。

一方のナ・リーグは、トップ3がロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)、ムーキー・ベッツ(ドジャース)、フレディ・フリーマン(ドジャース)という昨季と全く同じ顔ぶれになっています。エンゼルスからドジャースへ移籍した大谷は4番手という評価。5位にはフェルナンド・タティスJr.(パドレス)がランクインしています。

大谷派直近3シーズンで2度のMVPを受賞し、昨季は日本人選手として初の本塁打王にも輝きましたが、今季は右ひじの手術の影響でDHに専念するため、MVP争いでは不利な立場となります。MLBではこれまでにエドガー・マルティネスやデービッド・オルティスといった素晴らしい打者たちがDHとして活躍してきましたが、主にDHを務めた選手がMVPを受賞した例は過去に一度もありません(二刀流の大谷は除く)。MVP争いで重視される総合指標WARの数値が稼ぎにくいポジションのため、MVP受賞のためには他を圧倒するような打撃成績が求められます。

なお、ベッツはレッドソックス時代の2018年、大谷はエンゼルス時代の2021年と2023年にMVPを受賞しており、今季も受賞すると、フランク・ロビンソンに次いで史上2人目の「両リーグMVP」を達成することになります。また、フリーマンもブレーブス時代の2020年に受賞しており、史上6人目の「異なる2球団でMVP」を達成するチャンスがあります。

昨季史上初の40本塁打&70盗塁を達成したアクーニャJr.にドジャースの「MVPトリオ」が挑む構図となるナ・リーグのMVP争い。今季もハイレベルな争いが繰り広げられそうです。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

© 株式会社SPOTV JAPAN