立ちはだかった同学年の「壁」 尊富士(青森・五所川原市出身)、大鵬超え新入幕12連勝ならず

 大相撲春場所12日目(21日・エディオンアリーナ大阪)一瞬の隙を突かれた。向かうところ敵なしだった新入幕尊富士(青森県五所川原市出身)に、ついに土がついた。新入幕初日からの連勝は11でストップ。昭和の大横綱「大鵬超え」はならなかった。

 大相撲には「壁になる」という言葉がある。番付上位の者が上り調子の新鋭に対し力の差を見せつけ、相手の成長と奮起を促すことだ。

 ただ一人全勝の尊富士に試練を与える壁に、この日指名されたのは大関豊昇龍。抜群の身体能力を誇りスピードもある。勝ちにこだわり、立ち合いの変化もいとわない勝負師だ。同じ1999年生まれながら初土俵は5年近く早い。優勝も経験し、幕尻の尊富士に対し既に看板力士の大関。ようやく番付を上がってきた格下を挑発するかのように前日、「待ってたぜ」と口にするなど対抗心をあらわにしていた。

 尊富士はいつも通り低く、強い当たりで土俵際まで攻め込み有利かとみられたが、足腰の強い豊昇龍が繰り出した切れ味鋭い投げで宙に浮いた。

 支度部屋に戻る途中「くそっ」と悔しそうな尊富士。「自分の立ち合いはできた」と言いつつ、「速い」と行く手を阻んだ同学年に脱帽した。

 とはいえまだ1敗。優勝争いは後続4人と2差がある。土俵下の粂川審判長(元小結琴稲妻)は「相撲は悪くない。引きずらないだろう」と尊富士有利とみる。

 13日目に待ち構えるのは関脇若元春。「自分の相撲を取るだけ。まだ終わっていない。切り替えてやるしかない」。24歳の新鋭が優勝を見据え、壁超えを誓った。

© 株式会社東奥日報社