【平成の春うた】松たか子「明日、春が来たら」わくわく新生活!希望に満ちた季節到来  音楽的な才能は父親譲り?松たか子の名曲「明日、春が来たら」

リレー連載【昭和・平成の春うた】vol.5 明日、春が来たら / 松たか子 作詞:坂元裕二 作曲:日向大介 編曲:日向大介 発売:1997年3月21日

松たか子最大のヒット曲、「明日、春が来たら」

現在までに松たか子の最大ヒットとなっている「明日、春が来たら」は、デビューシングルとして1997年3月21日にリリース。NTT「わくわく新生活キャンペーン」CMソングに起用された。希望に満ちた季節の到来が活写され、平成の春ソングを語る際には絶対に外せない1曲だろう。

1993年、16歳の時に歌舞伎座で初舞台を踏んで以降、翌1994年にはNHKの大河ドラマ『花の乱』でテレビドラマに初出演。そして1996年にはフジテレビの “月9” ドラマ『ロングバケーション』に出演してますます人気を高めていた頃。1997年秋からは同じく “月9” の『ラブジェネレーション』に主演して、いよいよ絶頂期を迎える。そんな真只中での歌手デビューであった。

松たか子のデビューを固めたドラマ制作陣

作曲及びプロデューサーを務めた日向大介は、自身のユニット "CAGNET" で『ロングバケーション』と『ラブジェネレーション』の音楽を共に担当した人物でもある。そして作詞は当時新進脚本家だった坂元裕二。やはりフジテレビ "月9” 枠の『同・級・生』や『東京ラブストーリー』、『二十歳の約束』などの脚本を手がけ、ほとばしる才能を発揮していた。ちなみに『東京ラブストーリー』の音楽を担当した日向敏文は、日向大介の実兄である。

松たか子の満を持しての歌手デビューを、彼女が関わっていたドラマ制作陣で固めたことは、結果的に大成功となった。なによりピアノでプロ級の腕前を持つ松の音感は抜群で、日向が用意した仮歌を一度聴いてすぐに習得したのだという。トップ10入りして50万枚を売り上げる大ヒットとなり、前年(1996年)は司会を務めていた『NHK紅白歌合戦』に、この年は歌手として初出場を果たしている。

本人は緊張したと語っていたが、さすがは舞台慣れしている女優、ステージに爽やかな風をもたらせながら、実に堂々とした歌いっぷりであった。その後も女優業と並行して歌手活動も続け、2017年までにシングル22枚、オリジナルアルバム10枚を発表。2001年から2010年にかけてはコンサートツアーを全国展開した。どの会場でも、「明日、春が来たら」が歌われると会場の拍手が最高潮に達していたことは間違いない。

音楽的な才能は、父親である2代目・松本白鸚譲り

カップリングの「ずっと…いようよ」で、松は自ら作詞にも挑んだ。日向と共にプロデュースを担当したフジテレビの永山耕三ディレクターから、"女の子が3人でドライブに行く” というテーマを課されて書いたものだった。「明日、春が来たら」からわずか2ヶ月後にリリースされた2枚目のシングル「I STAND ALONE」でも作詞した松は、以降も自らの楽曲の多くを作詞、さらには作曲も手がけてゆくことになる。

松の音楽的な才能は父親譲りかもしれない。父の2代目・松本白鸚も、かつての市川染五郎時代に、自らの作詞・作曲による「野バラ咲く路」をヒットさせ、たくさんのレコードを出していた。そしてなんと、2009年のアルバム『Time for music』で松たか子が「野バラ咲く路」をカバーしていた。

最近、工藤夕貴が、父・井沢八郎の「あゝ上野駅」をカバーして話題になったが、松はずいぶんと早い時期に父娘の歌継ぎを果たしていたのだ。これは最高の親孝行。2人で一緒に歌う姿を見てみたい。松本白鸚も「明日、春が来たら」を歌ってくれたら最高にお茶目なのだけれど。

カタリベ: 鈴木啓之

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