世界で蔓延するゾンビ麻薬“フェンタニル”、米中が協力して解決を望むほどの脅威…日本にも忍び寄る違法麻薬

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、世界中で蔓延している違法麻薬“フェンタニル”について取り上げました。

◆アメリカ政府・大統領も警戒するフェンタニル

イギリス・BBCの報道によると、2021年、全世界の薬物使用者数は約2億9,600万人。この10年で23%も増加しており、薬物汚染は拡大しています。その背景には薬物が安価になったことや心理的ハードルの低下などがあり、さらには鎮痛剤として使われていたものが合成麻薬として市場に拡散されているそうで、その象徴的な存在が"フェンタニル”です。

これは本来、がん患者のための鎮痛薬で、摂取すると幻覚症状などを引き起こし、無気力になることから別名「ゾンビ麻薬」と言われ、安価で出回っています。とりわけアメリカではフェンタニルの過剰摂取による死亡者が激増していて、2016年は約1万8,000人だったものが2021年には約7万人に。若年層から現役世代においては死因の1位になっており、バイデン政権ではフェンタニル対策を講じることを宣言しています。

昨年末から年明けにかけて、キャスターの堀潤はアメリカ・サンフランシスコに取材に行ったところ、中心地からほど近い場所ではホームレスたちの生活に合成麻薬が入り込み、惨憺たる状況だったと回顧。

結果として、そこは治安が悪化し、店舗も次々に撤退。非常に穏やかで平和だった街がここ数年で大きく変容してしまったそうです。堀が撮影してきた写真や映像を観て、キャスターの豊崎由里絵も「私も8年前に観光でサンフランシスコに行ったけど、様子が全然違う」と驚きを隠せません。

タレントのREINAさんは、年末年始にアメリカ・ニューヨークを訪れた際、そこも似たような状況だったと振り返り、「街や地下鉄の駅などに『フェンタニル禁止』のポスターが掲示され、一番驚いたのは、オーバードーズに対応する"ナロキソン”という薬を市が自動販売機で無料提供していたこと。アメリカでは無料で配ることはあまりないので、どれだけ深刻な状況なのかが見受けられた」と悲嘆します。

◆フェンタニルの脅威はアジア、そして日本にも…

フェンタニルの脅威はアジアにも接近しています。なかでも韓国では1994年に皮膚に貼るタイプのフェンタニル・パッチが処方箋で入手可能となり、その結果、処方者数が年々増加。購入者は主に若年層で、過剰摂取によって死に至るケースも起きています。また、青少年による麻薬事件はこの5年間でおよそ6倍に増加しています。

こうしたなか、アメリカと中国がフェンタニル対策を強化。昨年11月に米中首脳会談が行われましたが、そこでフェンタニル対策も話し合われ、両国が協力することで合意。今年1月には米中の政府高官による初の作業部会が開かれ、国際的な密売組織の資金調達遮断、流通阻止などを協力して行うとしています。

そして、日本でもフェンタニル関連の問題はすでに起きています。去年2月、交際男性の胸付近にフェンタニルを含むテープ剤を数枚貼り付けるなどして薬物中毒で死亡させたとし、無職の47歳女性が傷害致死と麻薬取締法違反の疑いで逮捕されています。なお、このテープ剤は処方されたもので誰もが入手が可能とあって、当局は警戒を強めています。

Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは、日本でも死亡にまで至る事件が起きていることに恐怖を覚えつつ、今後、若者を中心にフェンタニルが広がってしまうことを危惧。そうならないよう早急な対処・対応を切望します。

一方、経済アナリストの池田健三郎さんは、米中が協力したことに注目。「なかなか協力することのない米中が協力するということはよっぽどのことなので、日本もそこに入れてもらうか、おそらくOECD(経済協力開発機構)など先進国の枠組みのなかでこの対策に関する国際的な協議が始まる、もしくは始まっているはずなので、しっかりと取り組んでいくことが重要」と指摘していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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