不登校、脳性まひの「異才」2人が見つけた道 版画と歌で大活躍、衝突と苦悩経てたどり着く

会場で話す吉田和美さん(右)と悠太さん。関本里絵さんと泰輝さんはオンラインで参加した=京都府亀岡市・ガレリアかめおか

 ハンディキャップがある子の才能をどのように見つけ、輝やかせることができるのか―。版画家の吉田悠太さん(18)の母和美さん(58)=京都府南丹市=と、プロのシンガー・ソングライター関本泰輝さん(20)の母里絵さん(49)=京都府亀岡市=が「我が子と歩んだ子育て」と題して講演した。世間が示す「普通」とは異なる自分の子どもに思い悩んだ経験や、才能を生かせる道を見つけるまでの道のりを語った。

 悠太さんは小学生低学年で不登校になり、高機能自閉症スペクトラムと診断された。和美さんは無理にでも学校に連れて行こうとして、悠太さんと激しく衝突したことを振り返った。

 物理学者アインシュタインも同様の悩みがあったと知り「悠太にも何か才能はないか」と興味を示す場所に連れて行った。江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の作品に引かれ、版画を彫るようになり「泣いてばかりから、悠太が前に進むことを考えるようになった」。

 日本財団と東京大先端科学技術研究センターが実施していた不登校の児童向けの「異才発掘プロジェクト ROCKET」にも参加。講師から「不登校は個性。時間がたっぷりあるので、好きなことをやらせればいい」と言われ「目からうろこだった。発達障害、不登校と言われても恥じることはなくなった」と語った。

 里絵さんは、オンラインで講演した。脳性まひで生まれ「当初は『人並み』の生活ができなければと、計算などを教えた。だが思い通りいかず落ち込んだ。『普通』とは何か、真剣に考えたこともあった」と明かした。

 息子が好きなことを見つけようと、車いすサッカーや音楽ライブなど、さまざまな場所に出かけた。2013年公開の映画「アナと雪の女王」を見て主題歌を歌ったMay J.さんへの憧れを口にして、ボイストレーニングに通い始めた。

 昨年12月にミニアルバムをリリースしてデビュー。里絵さんは「一緒に好きなことを探して音楽を見つけ、今は夢を追っている。苦労も多いが、この子がやりたいことをやらせようと決めた」と話した。

 講演は、11日にガレリアかめおか(亀岡市)で開催。重症心身障害児施設「花ノ木医療福祉センター」(同)の支援者らでつくる「花ノ木後援会」と亀岡市障害児者を守る協議会が主催し、約30人が参加した。

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