職場や親族の集まりなどで接する機会も多い「若者たち」。年齢が違えば、考え方や価値観に違いがあるのも当然ですが、関わり方に戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。「Z世代のタイプ別にアプローチを変えることでより円滑なコミュニケーションをとれるようになる」と、自身もZ世代であり、株式会社OMOCHI代表取締役である白附みくる氏は言います。白附氏の著書『Z世代の取扱説明書 Z世代社長が語るリアルな本音』(サンクチュアリ出版)より、詳しく見ていきましょう。
Z世代は「3タイプ」に分類できる
Z世代と言っても十人十色、さまざまなタイプの人がいます。
わたしは同世代の部下をマネジメントする際に、相手に合わせて対応を変えています。
やはりマネジメントは、相手を理解することがとても大切なのですね。
さまざまな心理学にも触れながら、一人ひとりを見て何を伝え、どのように関わればその部下が成長するのかを模索した結果、Z世代は次の3つのタイプに分かれるという結論に至りました。
①ほめ伸びタイプ
言葉通り、ほめることで伸びるタイプです。
このタイプの人は、自由に行動することを許したほうが成長します。実際に結果を残してくれたときに思いきりほめるととても喜び、より率先して自分ができることを見つけ、取り組んでくれるようになります。
②叱咤激励タイプ
ほめても「いやいや…、そんなことはありません」と恐縮してしまうタイプです。
このタイプは、改善すべきことを見つけて指摘したほうが成長します。「きちんとしなければダメだよ」と伝えることで、「はい、すみません。きちんとがんばります」と言い、より素晴らしい成果を出すのです。
③楽観タイプ
あまり深く考えておらず、怒られてもほめられてもヘラヘラしている人はいませんか?
このタイプは、叱ると「先輩、怖いっす…」「いやもう、僕だってめっちゃ確認しているんですよ~。でも、何回やっても失敗しちゃうんですよ」「僕、本当に仕事できないんですよね〜」と、ヘラヘラしながら返してきます。
指導に手を焼くことが多いかもしれません。
ここからは、この3タイプ別のさまざまな場面でのアプローチを解説します。
ぜひ部下の指導に活用していただければと思います。
タイプによって「刺さるほめ方」が異なる
「Z世代は、叱るよりもほめたほうがいい」と思われがちですが、ほめられることを嫌がる人も少なくありません。
3タイプで言うと、「ほめ伸びタイプ」と「楽観タイプ」は人前でほめられれば喜びますが、「叱咤激励タイプ」は「人前であまりほめないでほしい…」と思うタイプです。
また、「ほめ伸びタイプ」はほめられると心から喜ぶのですが、「楽観タイプ」のなかには、ほめられても「あ、そうですか?うれしいっす」と軽く受けとめ、ほめられていることをあまり意識していない人もいます。
楽観タイプの場合、上辺の「ほめられた」ところだけを喜ぶ傾向があります。本当は、ほめられたとしても自分だけではできなかったこと、ほかの人のサポートのおかげだったことなどをしっかりとわかってほしいところですが…。
なお、3タイプすべての人が承認欲求をしっかりと持っているので、ほめられること自体は、好意的に受けとめます。どのタイプであっても、絶対にほめる意識は忘れないようにしてください。
ただ、タイプによってほめ方を変える必要があります。
基本は次の通りです。
①ほめ伸びタイプ:存在自体を認めてほしい
②叱咤激励タイプ:プロセス・工夫したところをほめてほしい
③楽観タイプ:結果をほめてほしい
また、Z世代には、「自分のことを大事に想ってくれている」と感じてもらうことが何よりも大切です。そうでないと、言われていることをパワハラだと受けとめてしまう特徴があるからです。
「大丈夫? しんどくない?」「このままだったらつらくない? もっと〇〇をしたほうがいいと思うよ」というふうに、あなたが相手のことを大切に想っていることをきちんと伝えてあげてください。
日頃から、常に思いやりの気持ちを表現することが大切です。
Z世代のタイプ別「NGワード」とは?
Z世代の3タイプには、それぞれNGワードがあります。ほめたり叱ったりする際には、「地雷」を踏まないように気をつけましょう。
ここからは、3タイプ別のNGワードと適切な伝え方をお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
①ほめ伸びタイプ
× 「これをしなかったほうがよかったよ」
× 「あれはダメだったよ」
〇 「こういうふうにしたほうが、もっといいよ」
ほめ伸びタイプはマイナス意見を聞き入れられない傾向にあるので、否定することは絶対にNGです。
注意するときは、「いまのままでもいいけれど、こうするともっとよくなるよ」と伝えましょう。伝えている意味は同じでも、相手の感じ方がまるで変わってきます。
②叱咤激励タイプ
× 「今月は300万円も売上をあげているね、すごいね!」「お客様がこんなふうにほめていたよ!」(結果をほめる)
× 「同期で一番売上をあげているよね、すごいね!」(他人との比較)
〇 「あなたがここをがんばったから、結果が出たよね」「お客様をずっと見て行動してきたから、結果が出たよね」(過程をほめる)
〇 「そういうことを気づかえる君だから、結果が出たよね」(他人と比較しない)
叱咤激励タイプは、結果や数字ばかりをほめられると逆にプレッシャーになってしまうのでNGです。プロセスを見て、結果が出た理由をきちんとほめるようにしましょう。
このタイプにはきちんと叱ってもいいのですが、誰かと比較することには敏感なので、ほめるときも叱るときも、他人と比較しないようにしましょう。
③楽観タイプ
× 「天才だね!」
× 「本当にすごいね!」
× 「えらいね!」
〇 「これだけできるんだから、ここをもっとがんばろうね」
楽観タイプはあまり堪えることがないため、NGワードがほとんどありません。注意したいのは、ほめすぎないこと。ほめすぎると調子に乗り、細かなミスが増えたり、細かいことはほかの人に任せればいいと勘違いしたりするので、「ほめて、落とす」バランスが大切と言えます。
Z世代は全体的に「自己肯定感」が低い!?
自己肯定感の高さをはかるのはとても難しいのですが、Z世代は全体的に自己肯定感が低いと言えます。ただ、3タイプの自己肯定感はある程度相関関係があるので、少し詳しくお伝えしますね。
3タイプのなかでもっとも自己肯定感が高いのは、「楽観タイプ」です。本人は気づいていなくても、「自分大好き」な傾向があります。
一方で、「ほめ伸びタイプ」と「叱咤激励タイプ」は、あまり自己肯定感が高くありません。なかでも叱咤激励タイプは、むしろ「自己否定感」が強いところがあり、何かと「自分がどうにかしなければ……」と、自分を責めてしまう傾向があるのです。
自分を高く見せている人のほうが、じつは自己肯定感が低い場合が多いので、過度に自分をよく見せようとする人は、本当のところ、自信がない人と言えます。
変わることも、複数のタイプを持つこともある
ここでお伝えしている3タイプは、心理学やコミュニケーション理論をベースにしながら独自にまとめたものです。すべてのZ世代の人たちに細かく当てはまるものではない場合もあるかもしれませんが、「そんな見方もあるのか」ととらえてください。
ちなみにわたし自身は、もともとは「ほめ伸びタイプ」でしたが、仕事をするようになって、「叱咤激励タイプ」に移行してきました。
このように、社会経験で変わっていくこともありますし、ひとりの人に3つのタイプが共存していることもあります。
ですから、見分け方が難しい場合は、時期によって「いまはどのタイプが強く出ているか」を感じながら、使い分けてみてください。
白附 みくる
株式会社OMOCHI代表取締役