やったわ、もう106万円を気にしなくいいのね!「月収8万円」の60歳専業主婦「月15万円まで働ける」と歓喜も、すぐに涙した理由

「優遇され過ぎ!」「公平だ!」などと、バッシングを受けることが多い専業主婦。さらに味方であるはずの夫から批判されることもあり、思わず「ふざけるな!」と言ってしまうようなことも。みていきましょう。

パート妻…年収105万円と年収106万円、手取り額に衝撃

――少しでも家計の足しにと

そんな思いで、パート・アルバイトに出る専業主婦も多いもの。そのとき、多くが意識するのが「年収の壁」です。なかでも意識するのが、社会保険上の「年収の壁」です。

まず第1の壁が「106万円」。106万円は社会保険料がかかるかどうかの境界線で、従業員101人以上の企業で週20時間以上働いて年収106万円(厳密には月収8.8万円)を超えると、社会保険への加入が必須となります。

第2の壁が「130万円」。年収130万円を超えると、企業規模に関わらず、社会保険の被保険者の扶養から抜けて、自ら社会保険に加入しなければならなくなります。

都内在住の59歳の専業主婦。年収は105万円であれば社会保険料は0円で、手取り額は103万9,500円。それが年収106万円になり社会保険に入ることになると、社会保険料は年間16.5万円程度で、手取り額は90万円を下回るようになります。たった1万円の違いで10万円もの手取り額に差が生じるので、年末辺りになると、なんとか収入調整できないかとやっきになるわけです。

【都内59歳・専業主婦…パート収入105万円と106万円の比較】

■年収105万円の場合

・社会保険料…0円

・所得税…9,500円

・住民税…9,500円

手取り額…1,039,500円

■年収106万円の場合

・社会保険料…165,396円

・所得税…0円

・住民税…5,000円

手取り額…889,604円

※配偶者64歳、年収450万円と仮定

もし、時給1,200円(ちなみに東京都の最低賃金は1,113円)で、週3、6時間勤務でスーパーのレジ打ちのパートをしたら……年収106万円を超える可能性が高く、「年末は忙しいから、もう少し、パートは入れない?」という店長からお願いをされたとしても、「すみません、106万円超えちゃうので、むしろシフト減らしてもらえますか?」と心苦しく感じながらも言わないといけなくなるわけです。

60歳以降の扶養の収入要件…「106万円未満」→「180万円未満」に拡大に歓喜したが

パート勤めに出ていた専業主婦が意識する「106万円の壁」「130万円の壁」。ただ60代になると、この年収の壁が変わります。簡単にいうと、「年収が180万円未満」であれば、配偶者の勤務先の健康保険に入れてもらえることになります。ただ「①主として配偶者に生計を維持されている」「②配偶者の年間収入の2分の1未満である」という一定の条件があります。仮にパート妻が年収180万円未満ギリギリであれば、夫の年収は360万円以上あればよい、ということになりますが、夫の年収が300万円であれば妻の年収は150万円未満でなければ扶養には入ることはできません。

なお、180万円未満で扶養に入れるのは「従業員100人以下」の会社で働いている場合。さらに2024年10月からは、扶養に入れる条件が「従業員50人以下の職場」と制度改正があります。改正により従業員51人以上の職場で働く場合は「年収106万円」が収入の壁となるので、注意しておきたいところ。

もうひとつ気をつけたいのは「年金を受け取った場合の扶養判定」。この場合、扶養に入れるのは「年金+パート年収」が180万円未満、かつ夫の年収の2分の1未満にの場合。基本的に65歳になると老齢基礎年金の受給が始まります。令和6年度、老齢基礎年金の満額受給額は月6万8,000円で、年間81万6,000円。65歳で年金をもらいだすと「パート収入106万円」どころではなくなることは一目瞭然です。

また厚生年金加入歴が1年以上、かつ昭和41年4月1日以前の生まれた女性であれば、65歳を前に「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っている可能性もありますし、個人年金保険を受け取っている場合もあるでしょう。これらも扶養判定の際には、年収に含まれます。パート収入だけではないことに注意が必要です。

――もう、年収の壁なんて気にして働かなくてもいいのね!

と大喜びの65歳女性。年収180万円となると月換算15万円。月8万円強で仕事を調整してきた人からすると、存分に働くことができ、さらに収入も増え、しかも扶養に入ることもできる……嬉しいことしかありません。しかしそこに年金収入も加わると……扶養に入るためには、これまで以上に就労時間を抑えなければならない可能性も。

――一気に働く気が失せたわ(涙)

ぬか喜びに思わず涙するのも、仕方がないことかもしれません。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン