震えるほどうまいビールの記憶が夢後押し 男性が体験型醸造所オープン、「面白さ伝えたい」

クラフトビールとビールだるを手にする義本さん(滋賀県竜王町)

 滋賀県竜王町の義本健太さん(40)は、国内でも珍しい体験型クラフトビール醸造所「アールブルワリー・セルフ」を竜王町の「天然温泉 蒲生野の湯」の敷地内にオープンさせた。

 クラフトビール製造のうち、麦汁を作って糖化させ、もみ殻をろ過して煮沸するまでの工程を体験できる。麦芽やホップの種類や割合、組み合わせにより多様なクラフトビールに仕上がり、「正解がないからこそ面白くて一生楽しめる。その面白さを多くの人に伝えたい」と意気込む。

 大阪府熊取町出身。大学卒業後、旅行会社に就職した。ドイツを訪れた時に口にしたビールに「こんなビールがあるんだ」と驚いた。「当時、日本では画一的な味わいのビールが多い中、泡や香りが独特だった」。その後も海外を訪れる度に現地のビールを楽しむようになった。

 2016年、「ビールを造りたい」という思いから妻とドイツへ渡り、バイエルン州のビール醸造所で経験を積みながら職人養成学校でビール造りを学んだ。さらに専門養成機関でビール造りに関する高い専門的知識を身に付け、「ブラウマイスター」も取得した。

 日本へ帰国後、22年から妻の出身地である竜王町へ移住、地域おこし協力隊に就任して、町内外でビールの魅力を伝える活動に励んだ。

 今後、体験型醸造所の数を増やしたいと考えている。ドイツでできたてのビールを口にした時、あまりのおいしさに鳥肌が立った経験が、「大規模な醸造所を作りたい」という夢も後押しする。

 これまで人生の節目節目にいつもビールがあった。「たくさんの人に思い思いの『ビールがある風景』を提供したい」。

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