トム・ホランド、アン・ハサウェイもジブリ声優? 海外吹替版の意外なキャスティング

3月22日、日本テレビ系『金曜ロードショー』で、宮﨑駿が脚本・監督を手掛けた『魔女の宅急便』(2014年)が放送される。同監督の『君たちはどう生きるか』(2023年)が、米アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞したことで話題を呼んでいるが、スタジオジブリ作品の英語吹替版声優には、数多くのハリウッドスターたちがキャスティングされていることをご存じだろうか。

13歳の魔女・キキが、一人前の魔女になるために、知らない街で一人暮らしをしながら、唯一の特技である空飛ぶ魔法を使って「お届け屋さん」を始める『魔女の宅急便』。キキは初めての一人暮らしに奮闘し、素敵な出会いに胸を膨らませながらも、小さな挫折も経験する。そんなキキの姿にエールを送りたくなる本作は、この春、新生活をスタートさせる人や、同じような経験がある人が思わず共感する、優しさと幸せに満ちた物語だ。

高山みなみがキキの声優を務めた『魔女の宅急便』の英語版では、2002年からの『スパイダーマン』シリーズでメリー・ジェーン(MJ)を演じたキルスティン・ダンストがキキの声を演じている。彼女は、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたハリウッドの有名俳優だ。

前出の『君たちはどう生きるか』は、母を火事で亡くし、父・勝一の故郷へ引っ越した11歳の眞人が、謎めいた青サギと出会い、生と死が一体となった世界に迷い込んでいく物語。本作のアカデミー賞受賞を記念して、3月20日から英語版が日本で上映されている。菅田将暉が声を演じた青サギを、英語版では『TENET テネット』(2020年)、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)のロバート・パティンソンが演じた。

ほかにも、勝一の声を『ダークナイト』(2008年)シリーズのクリスチャン・ベールが演じており、さらに『哀れなるものたち』(2023年)のウィレム・デフォー、『デューン 砂の惑星PART2』(2024年)のフローレンス・ピューらも声の出演をしている。

クリスチャン・ベールは、『ハウルの動く城』(2004年)でハウルの英語版声優も担当。ハウルも『君たちはどう生きるか』の勝一も、オリジナル版では木村拓哉が声を演じており、2つのジブリ作品で木村の役をベールが演じているというのが興味深い。

1952年にイギリスで出版された、メアリー・ノートンの傑作児童文学『床下の小人たち』を原作にした『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)のイギリス版には、2017年からの『スパイダーマン』シリーズで人気俳優となったトム・ホランドが、神木隆之介演じる主人公の翔役で参加している。当時14歳だったホランドにとって、初めての映画出演作がジブリ作品だというのは、日本人としてうれしい気持ちになる。

『プラダを着た悪魔』(2006年)で世界中を魅了し、『レ・ミゼラブル』(2012年)でアカデミー賞助演女優賞を受賞したアン・ハサウェイは、『猫の恩返し』(2002年)で池脇千鶴が声を演じた主人公・ハルの英語版声優を担当。本作は『耳をすませば』(1995年)の主人公・雫が書いた物語という設定のスピンオフで、宮﨑からのリクエストによって、『耳をすませば』の原作者・柊あおいが描き下ろしたコミック『バロン 猫の男爵』のアニメ化作品となっている。

『紅の豚』(1992年)の主人公であるポルコ・ロッソの英語版を、1989年からの『バットマン』シリーズで知られるマイケル・キートンが、フランス語版を『レオン』(1994年)のジャン・レノが務めたり、『となりのトトロ』(1988年)のサツキとメイを、英語版ではダコタ・ファニング&エル・ファニング姉妹が演じたりと、ジブリ作品の海外吹替版には、数多くのハリウッドスターたちが参加している。

最後に、『スター・ウォーズ』シリーズで知られるマーク・ハミルは、『風の谷のナウシカ』(1984年)ではペジテ市長、『天空の城ラピュタ』(1986年)ではムスカ、そして『君たちはどう生きるか』では大伯父の声を演じ、3回もジブリ作品の英語版に出演していることを記したい。

慣れ親しんだスタジオジブリ作品も、英語で鑑賞してみると印象がガラッと変わるはず。上映中の『君たちはどう生きるか』英語吹替版を鑑賞し、ハリウッドスターたちの声に聞き惚れてみてはいかがだろうか。
(文=清水久美子)

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