【3月22日付編集日記】アップサイクル

 あるドイツのデザイナーはカフェ通いが日課だった。大好きなコーヒーを飲みながら、テイクアウト用の紙コップが大量に捨てられるのを気に病んでいた

 ▼何とかしたいと考え、飲んだ後も洗って使えるカップの製作を発案した。抽出後のコーヒーかすを木粉などと混ぜて固める方法で作る。自分も廃棄に加担しているとの認識が、発想させたのかもしれない

 ▼使われずに捨てられる物で新しい商品を作ることをアップサイクルという。持続可能な社会への認識とともに注目を集める。流通経済研究所主任研究員の鈴木雄高さんは公式SNSで、廃棄者の立場から考えることで利活用法が浮かぶと指摘する

 ▼アップサイクルは県内でも広がっている。いわき市の水産品販売おのざきは、下処理に手間がかかるなどの理由で捨てられることが多い魚カナガシラを使い、ココナツカレーの缶詰を商品化した。水産資源を次世代に残すには消費を見直す必要があるとの思いからだ 

 ▼食品ロスなどの解決に向け、利用されなかったり廃棄されたりする物から、さまざまな商品が世界中で開発されている。身近に目にする機会が増えそうだ。味わい、使ってみることで無駄のない暮らしを考えてみたい。

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