高田中の坂口伸校長(60)が、会津美里町の同校で1年生60人を前に東日本大震災について講話した。坂口さんは震災当時、教頭だった都路中(田村市)で被災した。「震災の記憶を風化させない」との思いを込め、震災の年に生まれた生徒たちに当時の被害状況や避難生活の様子を伝えた。
坂口さんは喜多方市出身。赴任先の学校などで毎年、震災講話を行い、会津の子どもたちに震災の経験を伝えている。今春、役職定年を迎えるため、校長としては最後の講話となった。
講話は震災から丸13年となった11日に行われた。坂口さんは震災直後の都路中について、一瞬にして足の踏み場がなくなるほどさまざまな物が倒れた状況や、東京電力福島第1原発事故で田村市内の別の学校に避難を余儀なくされた経過を、当時の写真を示しながら説明した。それぞれの避難先の中学校の制服を着た生徒らが写った卒業アルバムを見せ「生徒会が中心となって、やっとの思いで集めた一ページ。先生たちの宝物だった」と振り返った。
「将来、県外の人から震災のことを聞かれるかもしれない。『分からない』ではなく、福島に生まれた身として多くの人に語り継いでほしい」と語りかけた。
高田中1年の岩沢蒼太さんは「当たり前の学校生活がなくなり、大変だったことが分かった。今回聞いた話を震災のことを知らない人たちに伝えていきたい」と話した。