トニー・コフィ&アリーナ・ジュジンスカ、初共演アルバム発売

『Altera Vita』は、トニー・コフィ(Sax)とアリーナ・ジュジンスカ(Harp)がデュオとして手がけた、初共演アルバムだ。

本作は、サックスとハープが完璧な調和で奏でられ、ふたりは本作に収録されている打楽器の大部分も提供している。トニー・コフィはUKを代表するジャズ・サックス奏者として広く知られており、伝説的なUKのファンク・グループ、サイマンデのライブにも定期的に参加している。一方のアリーナは“ニュー・サウンド・オブ・ヨーロッパ”と称され、このデュオのレコーディングに対する革新的かつ新鮮なアプローチは本作でも明らかだろう。このアルバムのインスピレーション源でもある同名曲「Altera Vita」(2023年)は、イギリスの有数のジャズ誌『ダウンビート』による2023年の年間最優秀ジャズ・アルバムに選ばれ、シングルがこの賞を受賞するのは珍しいという。

『Altera Vita』は、受胎から必然的な終わり、あるいは新たな始まりに至るまでの人間としての経験を反映している。我々自身の旅立ちの間中、自身の環境に対する意識が最重要視することが必須であり、「音」という媒体を通して、私たちの感覚に集中するよう本作は導いてくれると言える。このオマージュは、ふたり人の想像的な、私生活においての根幹で、影響力のあるファラオ・サンダースに捧げられている。

2017年にふたりは、英バービカン劇場で開催されたEFG主催の<ロンドン・ジャズ・フェスティバル>で開催されたアリス&ジョン・コルトレーンを称える公演の舞台で共演を果たし、そこでのファラオの影響は根深かった。ファラオ・サンダースの死後のインスピレーションの波に乗り、トニーは彼への感謝の気持ちを「Altera Vita(For Pharoah Sanders)」の制作に注ぎ込んだ。アリーナ自身の調和の取れたハープが対比となり、ファラオの遺産の壮大さを響かせる静謐な音楽の対話が生まれた。2023年にリリースされ、高い評価を得たこの曲は、同名アルバムとなる本作の制作の大きなきっかけとなり、リセットを切実に必要としているこの世界に対する自発的な反応でもある。

何十億もの人々が「破滅の渦巻き」の人質となり、私たちの存在の暗い影に不釣り合いな話題に集中させ、関連性を育もうとする試みがより深い派閥主義を生むだけの現実の中で、『AlteraVita』は音のオアシスとして浮上する。このアルバムはまた静寂、精神性、平和を擬人化したオーディオスケープであり、私たちの集合意識の再構築に不可欠な抽象的概念である。トニー&アリーナによって、リスナーにじっと座り、意識する機会を提供するためにデザインされた作品だ。『AlteraVita』の核心は、二人の多忙な夏のスケジュールの中でロンドンのフィッシュ・ファクトリー・スタジオで熱狂に溢れた2日間に渡り、形成された。トニーとアリーナの相乗効果が、この急展開のレコーディング・セッションを支えた。サックスとハープの即興的なダンスとパーカッシブなビートが交錯し、イビサを拠点に置いているサックス奏者のミュリエル・グロスマンによる、驚異的なタンプーラも提供し、長年の共演と練習を重ね、培った想像的なパートナーシップから得た努力を要しないエネルギーの収穫の全てが反映されている。彼らの偉業は音楽が私たちの共同体の慰めであり、絆であることの証しである。

トニー・コフィとアリーナ・ジュジンスカは、特にジャズを通して表現される西アフリカと東欧の音の伝統の相互作用を内包し、私たちが共有する人間構造の象徴となる。私たちの共通点が私たちの相違点をはるかに凌駕していることを力強く思い起こさせている。

『Altera Vita』

2024年4月5日
BBE Music BBE779ALP

■Tracklist
SIDE A
1. Tabula Rasa - Blank Slate
2. Tu Vides - You See
3. Tange - Touch
SIDE B
1. Audite Me - Hear Me
2. Anima - Breathe
3. Altera Vita - Another Life

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