山形×宮城、伝統工芸コラボ「こけし将棋」 天童発祥「66」ルール

こけし将棋の駒と盤。駒の頭に文字が書かれ、ひっくり返すと「成る」

 こけしの形をした将棋駒で対局する「こけし将棋」が完成し、21日に宮城県白石市でお披露目された。尚絅学院大(宮城県名取市)の松田道雄教授(63)=山形市出身=が着想し、白石市のこけし工人が製作を手がけた。天童市発祥の「66将棋」ルールで楽しむ。東北の伝統工芸のコラボで愛好者を広げ、こけし産地の温泉街活性につなげたい考えだ。

 こけし将棋は指でつまめるサイズで、和風チェスの風情。素朴な顔のてっぺんに「王」「飛」「歩」などの字が書かれている。逆さまにすると「竜」「と」に「成る」ことができる。胴体のろくろ線は、白石伝統の弥治郎こけしの特徴だ。

 平板な将棋駒を、東北が誇るこけしとブレンドさせて、新たな伝統工芸品にできないか―。こんな発想で松田教授から依頼を受けた弥治郎こけし工人の新山実さん(68)が、5カ月がかりで完成にこぎ着けた。頭をカットした大胆さが光り「立体的な駒で指すのが楽しいと言ってもらえる」と話す。

 66将棋は、天童商工会議所が2018年に考案したルールで、縦横6マスずつの盤上で楽しむ。本将棋に比べて決着までの時間が短く、手軽に指すことができ、観光ツールになり得る。こけし文化が根付く温泉地での滞在に、お土産にとの狙いがある。

 この日の白石市定例会見で、こけし将棋を紹介した山田裕一市長は「66こけし将棋」として商品化し、ふるさと納税の返礼品とする考えを示した。

 東北にはこけし産地が多く、その数だけ特色のあるこけし将棋駒を生み出せる。松田教授によると、岩手県花巻市の南部こけし版、仙台市の作並こけし版の製作が決まり、鳴子(宮城県大崎市)でも検討が進められているという。「天童将棋駒の書き師とのコラボ商品も予定中」と明かす。

 将来的には「チェスと連携した世界戦略も見据えている」と構想はどこまでも広がる。

66将棋 6×6の計36マスの盤で対局する。双方とも歩6枚、王、金、銀、桂、香、飛または角の計12枚を配置。駒の動かし方は本将棋と同じで、王を取った方が勝ち。自陣2列目に歩を自動的に並べ、他の6駒は自陣1列目に交互に並べる。配置によって戦法が変わり、配置パターンは207万3600通りになる。

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