キーウにロシアの大規模ミサイル攻撃、31発すべて迎撃も17人負傷=ウクライナ当局

ウクライナ当局は21日未明、首都キーウにロシアのミサイル攻撃があったと発表した。ロシア軍が発射した31発のミサイルはすべて迎撃したものの、落下した破片などで子供を含む少なくとも17人が負傷したという。

キーウでは21日午前3時ごろに最初の空襲警報が鳴り響いた。それから2時間後に1回目の爆発音が聞こえた。

ポディルスキー地区、シェフチェンキフスキー地区、スヴィアトシン地区で破片が落下し、変電所の屋根やいくつかの住居ビル、複数の車が燃えたと、キーウのセルヒイ・ポプコ軍事行政長官はメッセージアプリ「テレグラム」で述べた。

「戦闘作戦は成功し、敵のミサイルをキーウ上空で、そしてキーウへ向かう途中ですべて撃ち落とした」

現段階ではロシアが何を標的にしていたのかは分かっていない。

ウクライナ当局によると、負傷者のうち4人は病院で手当てを受けている。

この日のロシア軍の攻撃は、ここ数週間で最大規模のもの。ウクライナ側からは最近、ロシア側の国境地帯への攻撃が相次いでおり、ロシア政府は報復を宣言していた。

攻撃を受け、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は軍事援助のさらなる拡大を、西側の支援国に改めて求めた。

ルキアニウカというキーウ市内の住宅街では、路上に大きなクレーターができた。爆風と衝撃波で窓ガラスが割れ、あちこちで建物が損傷した。

コーヒー店はめちゃくちゃに破壊された。食料品店や診療所なども廃墟と化した。店員らは動揺を隠せないまま、粉々になったガラスを片づけていた。建物の上層部はアパートになっており、住民たちががれきの中から所持品を持ち出そうとしていた。

多くの市民は早朝から、安全を確保するため地下室や地下鉄駅で過ごした。

母親の50歳の誕生日に合わせてキーウを訪れていたソフィアと名乗る女性は、攻撃から間もなく現場に足を運び、涙を流していた。

「彼ら(ロシア)は私たちの過去を、そして未来を破壊している」とソフィアさんは話した。ウクライナが受けている痛みに世界が無関心であること、あるいは関心が薄れていることに、彼女は憤っていた。

「(関心を得るには)もっと多くのウクライナ人が死に、苦しみ、血を流さなければいけないというのか?」

キーウで暮らすテティアナさんは、「むこうでは車が燃えていて、あらゆるものが爆発していた。(中略)私は猫用のキャリーを持って、飼い猫を探しに戻ったけど、見つけられなかった」と話した。

追加の軍事援助求める

ゼレンスキー大統領は20日、東部ハルキウ州にロシア軍の攻撃があり、5人が死亡したと発表した。

近郊のスーミ州当局によると、先週からロシア軍の砲撃や空爆が激化しており、300人以上が避難を余儀なくされたという。

ゼレンスキー氏はここ数日、さらなる軍事援助が必要だと繰り返し訴えている。特に防空システムの追加提供を西側諸国に求めている。

21日には欧州連合(EU)加盟国の首脳とビデオリンクを通じて会談し、ウクライナ兵が使用できる砲弾の量は「欧州にとって屈辱的な」量しかないと述べた。

「ロシアはいまだ制限なく、欧州の農業市場にアクセスできている」

「ウクライナの穀物が路上や線路に投げ出されている中、ロシアの製品はいまも欧州に運ばれ、(同国大統領のウラジーミル・)プーチンの支配下にあるベラルーシの製品も欧州に運ばれている」

21日の攻撃から数時間後、ゼレンスキー氏は「このようなテロが連日連夜続いている。世界が団結し、防空システムで我々を助けてくれるのなら、これを食い止めることができる」と、テレグラムに投稿した。

「いまウクライナではこうした防御が必要だ。(中略)パートナー各国に十分な政治的意志があれば、十分に実現可能だ」

先月にドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議でも、武器の追加供与が緊急に必要だと訴えていた。

「ウクライナを人為的な兵器不足、とりわけ大砲や長距離戦闘能力が不足した状況に陥れるなら、現在進行している激しい戦争にプーチンが適応するのを許すことになる」

ロシア側への攻撃相次ぐ

ウクライナと国境を隔てたロシアの複数の町も攻撃を受けている。

今週初めには、ロシア西部ベルゴロド州への攻撃で16人が死亡し、98人が負傷したと、同州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事が発表。今後数週間にわたり、数千人の子供たちをベルゴロド市とその周辺地域から避難させる方針だとした。

ロシア大統領選挙で5期目の当選を果たし、任期を2030年まで6年延ばしたプーチン氏は、ウクライナでの戦争を継続すると誓っている。

プーチン氏は先週、ウクライナ側からのロシアへの攻撃について、「罰せられないまま放置されることはない」と述べていた。

この発言はウクライナの人々にとっては、さらに神経をとがらせながら夜を過ごし、より多くのミサイル攻撃や破壊行為に直面することを意味する。

ロシア凍結資産の活用を協議

こうした中、ベルギー・ブリュッセルではEU首脳会議が開かれ、経済制裁の一環で凍結された数十億ユーロのロシア資産をウクライナ支援に活用する案など、対ウクライナ軍事・財政援助の強化について協議が行われた。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は改めて、この案への支持を表明した。

欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は、EU首脳会議に先立って各国首脳に送った書簡の中で、EUは「極めて重要な瞬間」に直面しており、この会議はウクライナに軍事援助を送るためのEUの取り組みを「加速」させるチャンスになるだろうと述べた。

また、EUはEU経済を「戦時下の体制」に置く必要があるとした。

(英語記事 Ukraine war: Russian missile attack targets Kyiv

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