アングル:中国の鉄鋼業「脱炭素」目標、25年達成に遅れ 電気炉転換進まず

Amy Lv David Stanway

[北京/シンガポール 19日 ロイター] - 研究者らによると、中国は巨大な鉄鋼産業の脱炭素化で遅れをとっている。需要の鈍化、リサイクル率の低さ、設備過剰の懸念が、脱炭素への移行を妨げているという。

鉄鋼業は世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約8%を占めており、世界の鉄鋼の半分以上が中国で生産されている。

中国は鉄鋼業からの排出削減に取り組むと約束しながらも、鉄鋼生産で使ってきた石炭焚き高炉から電気炉(EAF)技術への置き換えが進んでいない。EAFでは鉄鋼の原料として鉄鉱石の代わりに鉄スクラップを再利用する。

中国政府は、2025年までに粗鋼の15%をEAFで生産し、10年後までにその割合を20%まで引き上げるという目標を設定している。

しかし、コンサルティング会社ウッド・マッケンジーの調査責任者、デービッド・カショット氏によると、昨年にEAFで生産された鉄鋼の割合はわずか10%と、前年の9.7%から微増にとどまった。

米国のシンクタンク、グローバル・エナジー・モニター(GEM)は19日に発表した報告書で、中国の既存のEAF生産能力(約1億5000万トン)は政府目標であるシェア15%を達成するのに十分だが、稼働率は低いままだと指摘した。

中国の15%目標はさほど野心的ではないと考えられているが、目標が達成されれば中国の鉄鋼業からの排出量は8.7%減るとGEMは分析する。

ただ、スクラップ供給が限定されていること、鉄鋼需要の減少、電力供給の制限により、EAF施設の収益性は悪化しているという。また、資金的な理由から、脱炭素化に逆行するような、石炭ベースの高炉の新設も増えている。

現在、中国で供給される鉄スクラップの大半は従来型の高炉で使用されている。一部のEAFでは、原料を銑鉄に切り替えざるを得ず、炭素排出が抑えられていない。

スクラップ供給を増やすか、代替原料として水素ベースの直接還元鉄(DRI)に切り替えることが、中国におけるEAFの成功には不可欠だ。

DRIは、鉄鉱石を鉄に還元するクリーンな方法で、還元された鉄はEAFで使用できるペレットに加工できる。

脱炭素化の専門家であるクリス・バタイユ氏は「DRIで排出量を約70─80%削減できるが、原料となる鉄鉱石ペレットを十分に確保できるかどうか次第だ。今は供給が限られている」と語った。

同氏によると、必要なインフラと原料供給が整えば、2050年までに中国が全鉄鋼量の4分の3をEAFで生産することは可能だという。

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