阿部サダヲと黒木華が夫婦役、岸井ゆきのが少年フクスケに 『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』公演ビジュアル&配役解禁

COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』公演ビジュアル

松尾スズキ作・演出の舞台『ふくすけ』をリニューアルして12年ぶりに上演する、COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』より、作品の舞台・歌舞伎町で底知れぬ生と負のエネルギーが渦巻く公演ビジュアルがが解禁。また、キャスト陣の配役が発表された。

『ふくすけ』は、松尾スズキ作・演出により、1991年に悪人会議プロデュースとして初演、98年には松尾が悲劇をテーマに作品を創り上げる「日本総合悲劇協会」公演で再演、そして2012年にBunkamuraシアターコクーンで再々演された松尾の代表作。

薬剤被害によって障がいを持った少年“フクスケ”をめぐり、さまざまな境遇の登場人物たちが、底なき悪意と情愛に突き動かされながら、必死にもがき生きる姿を毒々しくも力強く描いた壮大な人間ドラマを描く。

かつてのインタビューで「生まれてきたこと、そして時世に付きまとう不平等や不条理に対する怒りをバネに厄介な作品を進化させる」と松尾が語る通り、ゆるいヒューマニズムを揶揄し、“悪”もまた人の姿であることを圧倒的な筆力で描き出した戯曲だ。12年ぶり4度目の上演となる今公演では、サブタイトルを“歌舞伎町黙示録”と題し、台本をリニューアル。フクスケが入院する病院の警備員コオロギと、盲目のその妻サカエの夫婦を軸に、物語は展開。初演から33年経っても色褪せず、上演の度にその時代に突き刺さる普遍的な物語が、今を生きる観客を狂騒の世界に引き込みむ。

このたび解禁された公演ビジュアルでは、東京公演の会場THEATER MILANO‐Zaがある歌舞伎町に鎮座する、いびつな福助人形を中心に、さまざまな境遇の人々とその思惑が交錯するカオスな世界を表現。歌舞伎町を舞台にした作品世界と現実の街とのシンクロしたビジュアルとなっている。

また、配役も発表。とある病院の怪しい警備員コオロギを演じるのは阿部サダヲ。コオロギを献身的に愛する盲目の妻サカエには黒木華。妻を探すエスダヒデイチには荒川良々。物語の鍵となる身体障がいを持った少年フクスケには岸井ゆきの。自称ルポライターのタムラタモツには皆川猿時。ヒデイチの協力者となるホテトル嬢のフタバには松本穂香

裏社会で暗躍するコズマ三姉妹のヒロミに伊勢志摩、エツに猫背椿、ミツに宍戸美和公。コオロギの愛人チカに内田慈。見世物興行の団長に町田水城。フクスケが入院する病院のスガマ医師に河井克夫。新興宗教団体の顧問赤瀬川に菅原永二。コズマ三姉妹の部下蒲生にオクイシュージ。そして、フクスケを監禁していた製薬会社の御曹司ミスミミツヒコには松尾スズキ。さらに、ヒデイチの妻で精神のバランスを崩して失踪したマスには秋山菜津子と、豪華キャスト陣が人間の本性をむきだし愛憎相半ばに暴走する登場人物たちを演じる。

COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』は7月9日~8月4日までTHEATER MILANO‐Zaにて、8月9日~15日までロームシアター京都メインホールにて、8月23日~26日までキャナルシティ劇場(福岡)にて上演。

松尾、阿部、黒木、荒川、岸井、皆川、松本、秋谷のコメントは以下の通り。

<コメント全文>

■作・演出/ミスミミツヒコ役:松尾スズキ

4度目の上演である。29歳の時、原稿用紙に鉛筆で書いた戯曲を、61歳のわたしが、パソコンで打ち直して書き改めた。よくこんな激しい戯曲を書いたものだと戦慄したり、若すぎるよ君!と、言うてもせんないことを言うてみたりしながら。

今回はコオロギとサカエというキャラクターを主軸にすえてみる。そうしたら、複雑過ぎるストーリーに強めの芯が入った気がした。昔ならいざしらず、自分が客ならこの程度にはわかりやすい芝居が見たい。歳をとったがゆえに優しくもなった。ただ、わかりやすさばかり求める今の風潮は大嫌いである。まだ、攻められる。わたしにも意地がある。

今考えられる最高のキャストがそろった。この布陣で、THEATER MILANO-Zaという癖だらけの城を攻め落とす。そんな気分で、よろしくお願いします。

■コオロギ役:阿部サダヲ

僕は『ふくすけ』に2回出ているのですけど、次にやるならもうフクスケ役ではないなと思っていたので、今回はコオロギと聞いて、なるほどな!と思いました。

僕が最初に観た『ふくすけ』でコオロギを演じていたのが松尾さんで。すげえ役だな、やってみたいな!とその時に思ったので、嬉しいですね。

松尾さんが20代の時に書いた作品だけれど、今も古さを感じない、すごいものを残しているなと改めて思いました。そして今回、歌舞伎町の芝居を、歌舞伎町でやることにも意味があると思います。1991年に松尾スズキという人がこういうものを書いていたんだ!と振り返っていただきたい。

この作品は熱量の高い舞台なので、観終わったお客さんがすごく疲れているという印象があるんですけど、2024年だからこそいろいろと考えさせられて、やっぱり少し疲れて帰っていただく舞台になるような気がします(笑)。

■サカエ役:黒木華

サカエという面白味のある役を演じられることも嬉しいですが、松尾さんの作品に出られることがなにより嬉しいです。前回の『ふくすけ』も拝見しましたが、とにかく“エネルギーが降りかかってくる!”という印象でした。今の時代では不謹慎とも言われそうなことのオンパレードですが、そのエネルギーの濁流の中にはしっかり伝わってくるものがあって、とても感動したことを覚えています。

阿部サダヲさんはすごく尊敬している役者さんで、初めてご一緒するので、稽古場や本番での姿を、余す所なく見尽くしたいと思います。

一演劇ファンとして、皆さんとの共演がとても楽しみです。お客様には、今までにない感情の波を味わっていただけたらなと思っています。

■エスダヒデイチ役:荒川良々

初演は映像で観たことがあって、とにかく「すごいものを観たぞ」という放心状態になりました。劇団にとって特別な作品に自分が出る日が来るなんて想像もしていなかったし、新しい『ふくすけ』に立ち会えるのが嬉しいです。THEATER MILANO‐Zaがある歌舞伎町には個人的な思い出が多く、初歌舞伎出演となった「オフシアター歌舞伎」はライブハウスでやりましたし、自分が初めて主演を務めた映画『恋する幼虫』を観たのもミラノ座でした。あと、田舎から出てきたばかりの90年代、おすぎさんを見かけたのも歌舞伎町……ピーコさんではなく、あれは間違いなくおすぎさんでした。確信があります。歌舞伎町の物語を、ぜひご当地でご覧ください。

■フクスケ役:岸井ゆきの

出演のお話をいただいた瞬間は、もうすっごく!嬉しくて、「夢が叶うとはこのことか」と喜びに胸躍りました。でも演じる役が「フクスケ」と知った途端……ただただ緊張の日々に急変しました。先日、松尾さんとお話した時に初めて知ったのですが、歴代のフクスケを演じられた温水洋一さんも、阿部サダヲさんも、14歳の設定だったとか。また新しい不安に襲われかけましたが「大丈夫、いける」と演出家からお墨付きをいただきましたので、ここは自信を持って堂々と演じたいです。私にとっての松尾作品は、見る人を信じ、伝えることを諦めない世界。稽古が本当に楽しみですし、皆さんと相談しながら、勇気を持って飛び込んでいきたいです。

■タムラタモツ役:皆川猿時

お客さんとして『ふくすけ』の初演をスズナリで観てまして、もうね、なんちゅうか、グラグラ沸き立つような、いやー、あの衝撃は今でも忘れられません。中でも林和義さんが演じていたタムラタモツは強烈でした。狂っているのに知性を感じるというか、もうね、最高でした。そんな大好きなキャラクター、タムラタモツを演じるのは今回で3度目。再演のとき、松尾さんに「もっと面白くやってくれ」と稽古場で言われて、セリフの合間合間に一発ギャグをしていたら「そういうことじゃないよ・・・」と冷たい目で見られたのも、今では良い思い出です(笑)。あの時はあの時で、ええ、必死だったんです。そんなわけで、今回も一生懸命、面白くてカッコいいタムラタモツを目指して、膝を労わりながら、ええ、大切に演じたいと思います!

■フタバ役:松本穂香

松尾さんと以前ご一緒させていただいた番組がとても楽しかったので、松尾作品の独特の世界観が大好きになりました。今回の『ふくすけ』も、制限の多い今の世の中、不謹慎なものも必要だなと思えたり、「別にいいじゃん」という気持ちになれたり、面白くて、でも痛くて、いろんな人のことを考えさせられる不思議な作品だなと思います。私が演じるフタバは、登場人物の中では一番まともだと思うんですね(笑)。笑わせながらも結構圧迫感のある作品の中で、フタバは芯を突いた言葉をいっぱい投げかけてくるので、そこを十分に考えながら演じたいなと思っています。

個性の強い方ばかりの座組の中で、物怖じせずにバーンと自分を出せたらいいなと。新しい挑戦を精一杯楽しんで、エネルギー全開でやっていきたいと思います。

■エスダマス役:秋山菜津子

過去に上演された『ふくすけ』を拝見しているので、まさか自分がやることになるとは…!と驚きましたが、とてもありがたく思っています。また今回は、以前とはちょっと違う『ふくすけ』になるということなので楽しみですね。

松尾さんが作り出すカオスな世界は、ほかの誰にも真似できない独自の魅力があると思います。私が演じさせていただくエスダマスは、これまで拝見してきた印象では“疾走しているな”というイメージ。今回も、“狂気に満ちた、周りを巻き込んで疾走していく女”とうかがっています。物語の舞台と同じく劇場も歌舞伎町にあるということで、ダークな、だけど煌びやかな世界なのだろうなと。その場所でちゃんと自分も生きていけたらなと思っています。

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