1-2月の「人手不足」関連倒産 24件 2023年度は過去最多の可能性が強まる

2024年(1-2月)「人手不足」関連倒産の状況

2024年1-2月の「人手不足」関連倒産は、24件(前年同期比14.2%増)で、2年連続で前年同期を上回った。2023年2月から13カ月連続で10件台を維持し、2023年度は2月までに150件に達した。このペースで推移すると、2023年度は2019年度の160件を抜き、過去最多を記録する可能性が高い。
1-2月は、「求人難」が13件(前年同期比30.0%増)、「従業員退職」が8件(同33.3%増)と、調査を開始した2013年以降、1-2月では最多となった。人手不足に加え、今春闘は大手で高額回答が相次ぎ、中小企業も従業員確保のために賃上げが避けられない状況になっている。
しかし、業績回復が遅れ、深刻な物価高に伴うコストアップ、ゼロゼロ融資の返済などが資金繰りを圧迫するなか、背伸びした賃上げが資金繰り悪化に拍車を掛ける構図が広がっている。

産業別は、最多がサービス業他の9件(前年同期比12.5%増)。このうち、飲食業が3件(前年同期1件)で、コロナ禍からの深刻な物価高、人手不足が浮き彫りとなった。
資本金1千万円未満と負債1億円未満が各17件(構成比70.8%)で、形態別では破産が23件(前年同期比15.0%増、構成比95.8%)と大半を占め、再建の難しさもうかがえる。

円安で輸出企業を中心に好業績を持続し、大幅な賃上げ回答が相次いでいる。一方で、中小・零細企業は賃上げ原資の確保が難しく、さらなる人員流出を招き、業績回復の機会を失う悪循環に陥っている。今後、賃上げは避けて通れないが、厳しい見通しの元では無理な賃上げは資金繰りを悪化させ、倒産件数を押し上げる懸念もある。

※本調査は、2024年1-2月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析した。(注・後継者難は対象から除く)


1-2月の「人手不足」関連倒産は24件、2年連続で前年同期を上回る

2024年1-2月の「人手不足」関連倒産は24件(前年同期比14.2%増)で、2年連続で前年同期を上回った。月ベースでは2023年2月から毎月10件台で推移し、増勢を持続している。
2023年度(4-2月)は累計150件(前年同期比120.5%増)に達し、前年同期の2.2倍に急増している。このペースで推移すると、2023年度は調査を開始した2013年度以降、最多だった2019年度(160件)を抜き、過去最多を記録する可能性が高い。
2024年1-2月の内訳は、最多が「求人難」の13件(前年同期比30.0%増)。次いで、「従業員退職」の8件(同33.3%増)、「人件費高騰」の3件(同40.0%減)の順。
輸出産業や大手企業の好業績が目立つが、コロナ禍から一転して人手不足が顕著になっている。業績回復が遅れ、賃上げの流れに乗れない企業、背伸びした賃上げで資金繰りが悪化した企業を中心に、「人手不足」関連倒産はしばらく増勢をたどるとみられる。

【要因別】求人難が5割以上

要因別では、「求人難」が13件(前年同期比30.0%増)で、3年連続で前年同期を上回った。構成比は54.1%(前年同期47.6%)で、半数以上を占めた。
このほか、「従業員退職」が8件(前年同期比33.3%増)で、2年連続で前年同期を上回った。
一方、「人件費高騰」は3件(同40.0%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。
賃上げ機運が高まるなかで、大手企業と中小企業、輸出産業と内需産業での格差が拡大している。労働条件の良い企業に人材が集中し、従業員の待遇改善が進まない企業は従業員の退職に歯止めがきかないことも危惧される。
人材確保のために賃上げは避けられず、業績回復が遅れた企業では人手不足がより深刻さを増す可能性が高い。

【産業別】10産業のうち、4産業で前年同期を上回る

産業別では、10産業のうち、4産業で前年同期を上回った。
最多は、サービス業他の9件(前年同期比12.5%増、前年同期8件)で、3年連続で前年同期を上回った。構成比は37.5%(前年同期38.0%)だった。
サービス業他では、飲食業3件(同1件)、教育,学習業2件(同ゼロ)、医療,福祉事業2件(同5件)、宿泊業1件(同ゼロ)。コロナ禍からの経済活動の本格的な再開、インバウンド需要の回復などにより、対面サービス業では人手不足が顕著となっている。
このほか、建設業が5件(前年同期比66.6%増)で3年連続、製造業が3件(同200.0%増)で2年連続で、それぞれ前年同期を上回った。また、農・林・漁・鉱業は1件で、4年ぶりに発生した。
一方、運輸業2件(前年同期比60.0%減)で、3年ぶりに前年同期を下回った。
また、情報通信業2件と、卸売業、小売業が各1件で、それぞれ前年同期と同件数。不動産が4年連続、金融・保険業が調査を開始して以降、1-2月では発生していない。

業種別では、前年同期に発生しなかった貨物軽自動車運送業、スポーツ・健康教授業が各2件、育林業、左官工事業、塗装工事業、防水工事業、ビスケット類・干菓子製造業、豆腐・油揚製造業、配電盤・電力制御装置製造業、菓子・パン類卸売業、パン小売業、旅館,ホテル、食堂,レストラン、配達飲食サービス業、無床診療所が各1件発生した。

【形態別】破産が9割超

形態別は、消滅型の「破産」が23件(前年同期比15.0%増)で、2年連続で前年同期を上回った。構成比は95.8%(前年同期95.2%)と9割超を占めた。
一方、再建型(会社更生法・民事再生法)は、4年連続で発生しなかった。
業績低迷が続く企業では、日々の資金繰りにも苦慮しているケースが多く、賃上げや福利厚生面への人的投資もなかなか難しい。従業員の退職が進み、経営再建に取り組むことが出来ず、債務を整理するために破産を選択する企業も多い。

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