【意識調査】仕事を辞めたい理由1位「低給料」…会社員が抱える退職願望とジレンマ

国税庁の統計から「年齢別・平均年収」の実態をチェック

総務省統計局の労働力調査によると、2023年平均の就業者数は6738万人でのうち328万人が転職していたことがわかりました。つまり、4.8%の人が「会社をやめて他社に転職」したことになります。

おなじく新年度を機に、転職を検討している人も多いのではないでしょうか。

しかし、転職や退職を決意したタイミングで、誰もがスムーズに退職できるわけでは残念ながらありません。なかには、行動に移せず悩んでいる人も少なくないようです。

今回は、退職に関する意識調査や国税庁「平均年収一覧」から、会社員が抱える退職願望とジレンマを解き明かしていきましょう。

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【最新】給料不満と経済的不安…意識調査からみえる会社員の実態

株式会社アシロが運営する「ベンナビ労働問題」は、退職に関するアンケート調査を実施しました。

経営者・役員・無職を除く18歳〜49歳の男女2510人の退職に対する本音が明らかになりました。

調査概要は以下の通りです。

  • 調査期間:2024年2月27日(火)〜2024年2月29日(木)
  • 調査機関:株式会社アジロ「ベンナビ労働問題」
  • 調査対象:経営者・役員・無職を除く18歳〜49歳
  • 有効回答数:2510名(10代:10%、20代:30%、30代:30%、40代:30%)
  • 調査方法:Freeasyを用いたインターネットリサーチ

仕事をやめたい理由1位は「給与が少ないから」、その他の理由は?

【図表1/3】仕事を辞めたい理由は?(複数回答)

同調査にて「仕事をやめたいと思ったことがありますか?」という質問に対して、2510人中1622人が「ある」と回答。全体64.6%にあたるもの人が退職を検討したことがあるようです。

さらに「仕事をやめたいと思ったことがある」と回答した1622人に理由を聞いたところ、一番多かったのは「給与が少ないから」(801件)でした。

その他、待遇面での理由として多く挙げられたのは「評価されない/給与が上がらない」(299件)、「残業代・ボーナスが出ない」(260件)でした。待遇が仕事のやる気に大きく関わっているのがわかります。

また、その他の理由として多く見受けられたのが人間関係。「人間関係が悪いから」(543件)をはじめ、「上司と合わない」(225件)、「ハラスメントに遭った/理不尽な扱いを受けているから」(128件)とつづきます。

チームや組織で働くうえで人間関係は避けて通れない問題。苦手な人や理不尽な上司がいる場合には、退職を意識するタイミングも格段に増えることでしょう。

10人中7人は行動できない…退職に向けて動けない理由1位は「経済的な不安」

【図表2/3】退職に向けて行動できない理由は?(複数回答)

退職を考えたと回答した人に「退職に向けて実際に行動していますか?」と質問したところ「はい」と回答したのは28.4%。残りの71.6%は退職に向けた行動がとれていないことがわかります。

行動していないと回答した方1161人が抱えている理由は「経済的な不安があるから」が最多。回答件数は、半数以上の615件にものぼりました。

また「次の仕事が見つかるか不安だから」「転職先でうまく行くかわからないから」「新しい環境・人間関係に慣れるのが大変だから」といった、退職後の環境に対する不安が合計799件。退職や転職に対して慎重な姿勢が見受けられます。

一方で「やめると言いづらいから」「同じ部署の人に申し訳ないから」といった、現職への引け目から退職を踏みとどまってしまう方もいるようです。

「退職したいが経済的に不安……」という会社員のループ。そんな会社員の、現状における平均年収を確認していきましょう。

【年齢別】平均年収はいくら?

国税庁の「令和4年分 民間給与実態調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の年齢階層別の平均給与は下記のようになりました。

【図表3/3】1年を通じて勤務した給与所得者の年齢階層別・平均給与

<年齢階層別の平均給与>

  • 19歳以下:124万円
  • 20歳~24歳:273万円
  • 25歳~29歳:389万円
  • 30歳~34歳:425万円
  • 35歳~39歳:462万円
  • 40歳~44歳:491万円
  • 45歳~49歳:521万円
  • 50歳~54歳:537万円
  • 55歳~59歳:546万円(男性平均は702万円で最高平均年収)
  • 60歳~64歳:441万円
  • 65歳~69歳:342万円
  • 70歳以上:298万円

男性の場合は年齢が上がるにつれて平均年収が上昇しており、55〜59歳では平均年収が「702万円」となっています。

一方、女性の場合はどの年代においても平均年収に顕著な差が見られず、ピークは25〜29歳で「349万円」です。

上記の年代別の賃金差から、女性は結婚や出産をするタイミングで家事や子育てといった仕事以外の役割が増えるケースが多く、収入の上昇があまり見られない現状がうかがえます。

ライフスタイルの影響も顕著にあらわれる働き方と年収。男女ともに、過去5年間で平均年収帯の割合に大きな変化はなく、賃金上昇があまりされていない現状がうかがえます。

ループを脱するには、それ相応の覚悟と計画性が求められるといえるでしょう。

経済不安が引き起こす「会社員の悲劇的ループ」を抜け出すには

退職への踏み出しを阻む、経済不安を抱える会社員が少なくない現況について確認してきました。

さまざまな価値観の人同士が集まり、ひとつの組織として仕事に取り組む以上、悩みや不満から「退職したい」といった感情がうまれるのはある意味自然なこと。それ自体、決して悪いことではありません。

それでは、このジレンマを解消するにはどうすればよいでしょうか。

まずは、現時点での仕事や貯蓄の状況、そして自分自身にどれだけストレスがかかっているかを洗い出してみましょう。そのうえで不安を解消するために「想定外のことが起こる前提での備え」を心がけるのが重要です。

時間や労力、元本割れなどリスクを理解した上で、副業や資産運用などを検討してみてもよいでしょう。ただし、本業以外で収入をもつハードルは高く、多大な時間がかかる可能性もあります。

しかし、自身の健康や精神状態などにまで支障をきたしている場合には、一時的な収入減や支出を仕方ないものと捉える必要があるでしょう。職場環境によっては退職の申し出が難しい場合もあるため、必要に応じて退職代行サービスや相談を受け付けている弁護士、行政窓口への相談も検討すべきかもしれません。

「今の自分は何ができるか」を考えて、将来に備えるためのアクションをとることを検討してみてください。

参考資料

  • 株式会社アシロ:ベンナビ労働問題「【2510人の社会人に聞いた!】仕事をやめたいと思ったことはありますか?」
  • 国税庁「民間給与実態統計調査(令和4年分)」

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