特集は春の自動車教習所です。夏と並んで一年で最もにぎわうのがこの時期。新生活を迎える高校生などが通っています。不足しているバスの運転手を目指す人も。春の教習所をカメラスケッチしました。
■東京へ進学する前に
長野市差出南の長野自動車学校。
朝9時、多くの若者が待合室に集まってきました。
指導員と共に車に乗り込む長野市の豊田茉鈴さん(19)。
豊田茉鈴さん(19):
「右カーブがいつも中央線側に内側寄りになっちゃう」
この日の技能教習は、苦手な右折を重点的に練習しました。
豊田さんは1年、予備校で勉強し4月、希望していた東京の大学へ進学します。
豊田茉鈴さん:
「大学入ってからでもいいかなと思ったけど、忙しくなりそうなので今の時期に取った方が楽だなと思って取りに来ました」
免許を取ったらー。
豊田茉鈴さん:
「よく家族で車で出かけたりすることが多い、車で音楽を聞きながらドライブするのが好き。それがすごくいい思い出になっています。まずは家族で市街地や家の近くをドライブしたい」
自動車学校は2月から3月にかけてが繁忙期。2月、入校した144人のほとんどが高校生や大学生です。
長野自動車学校・内村聡課長:
「夏はほとんどが大学生だが、この時期は4月に新たな生活を迎える高校生や大学生が中心に来ていただいている」
■路上練習に緊張…
まもなく高校を卒業する西沢知紗さん(18)。
春から県内の大学へ。電車で通いますが、今のうちに免許を取りに来ました。
西沢知紗さん(18):
「これからも長野で生活していこうと思うので、車は必要なのでとりあえず取りに」
指導員:
「一回路上出たけどどうでした?」
西沢知紗さん:
「緊張しました」
仮免許を取得し2回目の路上教習に臨みました。
指導員:
「ここ何km/hだと思う?」
西沢知紗さん:
「60km/hですか」
指導員:
「当たり、じゃあ60km/h出してみようか」
「速度出している時はよく先を見ないといけないからね」
約50分、路上で教習―。
西沢知紗さん:
「全然、雰囲気が違うので、右に寄ったり、難しくて緊張する。(免許取れたら)家族乗せて、行ける範囲で旅行に行きたい。(家族は)『早く運転して、どこかへ連れて』と言っている」
■クラッチ操作に苦戦…
こちらもまもなく卒業の高校3年生・吉沢勇人さん(17)。
4月、都内の大学に進学します。この日は4回目の技能教習。
指導員:
「ルームミラー、ドアミラー、合図。ドアミラー、目視して右によけていく」
吉沢さんはマニュアル車も運転できる通常の普通車免許を取る予定。
吉沢さんのような人は教習生の3割ほどで残り7割はオートマティック車限定です。
高校3年生・吉沢勇人さん(17):
「親もマニュアル取った方がいいと、僕もマニュアル乗りたい気持ちがあった」
まだクラッチ操作に苦戦―。
指導員:
「はい、エンスト。残念、頑張って」
その後もひたすら練習。
吉沢勇人さん:
「クラッチ操作が難しいところはあるが楽しい。大学は都心の方なので、車は長野に帰って来た時だと思う。その時に運転したいな。(将来は)スポーツカー系とか乗ってみたいので、マニュアル取った方がいいかなと思いました」
■バスの運転手を目指し
一方、こちらは駒ヶ根市の駒ヶ根自動車学校。
指導員:
「動かないってことであれば半クラッチまで足が上がってないってことなので」
県内で6カ所ある、バスを運転するのに必要な「大型2種免許」を取得できる教習所です。教習用のバスは20台。
バス会社とも連携し、年間500人のドライバーを送り出していて全国最大規模ということです。
駒ヶ根自動車学校・中畑邦彦社長:
「県外から合宿という形で、大型2種免許取りたい人を受け入れている。毎週多い時で20名近く、10日から2週間かけて免許を取りに来ている。ここ半年くらいインバウンドの影響だと思うが、バス会社も人を多く集めているので、当校もここ半年、従来のような需要があります。ですから、増えている」
■バス運転手になり「少しでも役に」
業界は今、深刻な運転手不足。
コロナ禍が明けてから観光バスの需要が高まっている他、運転手の労働時間を制限する、いわゆる「2024年問題」の影響です。
教習には近くバス会社に就職する人が来ています。
千葉のバス会社へ・福島県出身の男性:
「どんどん路線の便が廃止になったり減便になったりそういう状況を聞き、最終的には一人前になったら、皆さんの少しでも手助けになれればと」
地元のバス会社へ・群馬県出身の女性:
「高速バスで旅行するのが好きで、この仕事が人手不足とメディア等で聞き、『われこそは』ということで取ってみた」
■49歳女性「優しい運転手に」
指導員:
「車体と縁石のところがまだくっついている。左に回して」
教習を受ける東京都昭島市の阿部千恵子さん(49)。
都内のバス会社に就職が決まり、2週間の合宿で免許を取りに来ました。
4人の子を育てながらスーパーや新聞配達店で働いてきましたが、運転手不足を肌で感じバス会社に就職することにしました。
都内のバス会社へ・阿部千恵子さん(49):
「旅行が好きで旅行行くけど、地方でバスとか乗っても本数が少なくて不便だなと思うので、ゆくゆくは人手不足の所で運転したい。運転が好きで、最後の就職活動ではないけど、好きな仕事をして生涯を終えたいなと思って(笑)」
家族にも応援されて合宿に来た阿部さん。路線バスを運転する自分を思い描いています。
都内のバス会社へ・阿部千恵子さん:
「地域の方から『ありがとう』と言ってもらえる優しい運転手になって、即戦力になりたいので頑張ってここでいろんなことを習得したいと思う」
新生活に向けて免許取得。
教習生たちは「希望」も乗せて練習に励んでいます。