『三体』作家の短編が原作 中国SF『流転の地球 -太陽系脱出計画-』のヤバい魅力を伝えたい

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、宇宙のことを考えちゃって眠れない間瀬が『流転の地球 -太陽系脱出計画-』をプッシュします。

■『流転の地球 -太陽系脱出計画-』

いま話題のSF超大作といえばもちろん『デューン 砂の惑星PART2』であることは間違いない。1作目『DUNE/デューン 砂の惑星』からの期待を超えてくる仕上がりで、IMAXで観る歓びに満ちた映像と音、思わず引き込まれる世界観の作り込みと壮大さ。166分もの上映時間ずっと感心しっぱなしで、口を開けて見入ってしまった。

けれど生成AIをはじめとしたテクノロジー系ニュースが四六時中飛び交っている今日この頃。言葉にするのは難しいが、今の気分はもっと“サイエンス感”が強い、“イマココ”の現在地と地続きであるようなSF映画を求めていたのだ……。「これってただ香料奪い合ってるだけじゃん?」なんて『デューン』信奉者からお叱りをいただきそうなことを考えていた私がぜひ紹介したいのは、莫大な中国資本で制作された、宇宙を舞台にしたトンデモ設定が面白すぎる中国のメガヒット“SF超大作”『流転の地球 -太陽系脱出計画-』だ。

こちらは上映時間が173分と『デューン 砂の惑星 PART2』よりも少し長めで、描かれる物語は「ヤサイアブラマシマシカラメニンニクマシ」くらいボリューミーな味わい。あらすじは、太陽系が危ないから大量のロケットエンジンで地球ごと脱出しようと計画していた矢先に月が落ちてくることになり、人類一丸となってどうにかこうにかする、という話。

なのだが、デジタル生命(電子の中で永遠に生きる)の信奉者との対立、意志を持ったロボット(AI)との友情、沈没する地球と宇宙開発などの他のいろんなSF要素もてんこ盛り。加えて性愛に人類愛に家族愛、世界政治における駆け引きから大スペクタクル戦闘機バトルまで、あえて「〇〇のようだ」と作品名は出さないことにするが、映画好きな皆さんだったら作品名が脳内で列挙されてやまないはず。「これ必要?」みたいなシーンは確かにあるが、大味な物語展開もここまでやってくれたら良い。

そしてなにより上映中ずっとワクワクさせてくれるCG技術。これはもう「予算かけてます!」と自信満々な声が聞こえてくるぐらい素晴らしい。浮いてる宇宙ステーションを見ているだけでも楽しい。月面のスケール感もいい。画面を埋め尽くすドローンとの空中戦も迫力満点。映像的な面白さは『デューン』にだって引けはとらない。

最近公開されたSF映画で同じく良い作品だと感じているのが、2023年9月に公開されたギャレス・エドワーズ監督による『ザ・クリエイター/創造者』。ここでは“ニューアジア”としてアジアの近未来が舞台となっていた。ChatGPTやClaudeなど自然言語を操るAIが進化し“非生物が生物たりえる”現代において、アジア圏を取り巻くSFシーンが急激に加熱していく気配を感じる。

原作は『三体』の作家・劉慈欣の短編小説で、奇しくも(?) Netflixドラマシリーズ『三体』も同日から配信されている。あわせてチェックされたし。

『流転の地球 ―太陽系脱出計画ー』本予告
(文=間瀬佑一)

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