175cmの“小さな巨人”、アイザイア・トーマスがサンズで2年ぶりにNBA復帰「インパクトを残す準備はできている」<DUNKSHOOT>

フェニックス・サンズは現地時間3月20日にホームでフィラデルフィア・セブンティシクサーズを115-102で下し、今季戦績を40勝29敗(勝率58.0%)とした。

この日のサンズは計23本ものターンオーバーを記録したものの、22得点、8リバウンド、4アシスト、3ブロックをマークしたケビン・デュラントは「今はとにかく勝つこと。俺たちは多くの試合で勝ちたい。どういう形で勝つかも大切だけど、シーズンもここまで来たら、必要なのは白星を増やすことだけさ」とコメント。

それもそのはず。ウエスタン・カンファレンスのプレーオフスポットをかけた争いは激化する一方で、21日を終えた時点で、6位のダラス・マーベリックス(41勝29敗/勝率58.6%)と、翌戦も勝利したサンズが同勝率で並び、8位のサクラメント・キングス(40勝29敗/勝率58.0%)が0.5ゲーム差で追っている状況だ。レギュラーシーズンを6位以内で終えればプレーオフ出場が確定、7位~10位となった場合は最後の2枠をかけて一発勝負のプレーイン・トーナメントに臨まなければならない。
この日のサンズは9本の3ポイントを沈めたグレイソン・アレンがゲームハイの32得点に5アシスト、デビン・ブッカーが18得点、9リバウンド、11アシスト、2スティール、ロイス・オニールが13得点、ユスフ・ヌルキッチが10得点、15リバウンド、2ブロック、ボル・ボルが10得点、ブラッドリー・ビールが3得点、6リバウンド、7アシスト、2ブロックをマーク。

そして14点リードの第4クォーター残り1分48秒には、20日に10日間契約を結んだアイザイア・トーマスがコートに立ち、約2年ぶりのNBA復帰戦で1アシストを残した。

175cm・84kgの点取り屋は、ドラフト最下位(2巡目60位)でNBA入りした2011年から11シーズンにわたってリーグに在籍。サンズには14年夏のトレードでキングスから加入し、46試合で平均15.2点、3.7アシストを残すも、シーズン途中のトレードでボストン・セルティックスへ移籍したため、9年ぶりに帰還したことになる。

セルティックスでオールスターガードへ成長を遂げたトーマスは、2021-22シーズンにロサンゼルス・レイカーズ、マーベリックスを経てシャーロット・ホーネッツでプレーしたのを最後に、昨季は所属先が見つからず。それでも35歳のベテランは復帰を諦めず、22年4月10日以来、約2年ぶりにNBAのコートに立った。 今のサンズには、前回トーマスが在籍した当時の選手は皆無。ただ、2015年入団のブッカーは17年4月に70得点を奪った試合でトーマスと対戦しており、ビールとは2019-20シーズンにワシントン・ウィザーズで共闘している。

NBA復帰戦を終えたトーマスは次のように話していた。

「デビンの成長は素晴らしいこと。自分がボストンにいた時、彼は70得点をマークしたから、あの男がどれほどの選手なのかはわかっていたけどね。KD(デュラント)はもう説明不要だ。今朝、彼と一緒に練習したんだ。彼のような選手と同じチームでいられることを光栄に思うよ。ワシントンで一緒にプレーしたビールは友人の1人で、いつも俺の味方でいてくれたんだ」

トーマスのことを17歳の頃から知っているというデュラントは「彼にはストーリーがある。世界中のバスケットボールプレーヤーたちを感動させてきたキャリアがあるんだ」と、身長のハンデを乗り越えてNBAキャリア12年目に到達したこれまでの道のりを称えていた。
現在、サンズのバックコートにはブッカー、ビール、アレン、エリック・ゴードンといった実力者が揃っているため、彼らがケガで離脱でもしない限り、トーマスがシーズン終了までチームに残り、ローテーション入りする可能性は低い。

それでも、実績のあるベテランやドラフト上位指名の有望な若手であろうと容赦なくカットされるNBAの舞台に、再びトーマスが返り咲いたことは、また新たなストーリーを生み出したと言っていい。

「どんな機会であろうと、俺はインパクトを残す準備ができている。それは自分がプレーするかどうかに関係なく、点を取ることよりも重要なんだ。俺なら手本を見せて、自分の経験で引っ張ることができる。この機会を与えてくれたことにめちゃくちゃ感謝しているよ」

バスケットボールを心底愛し、磨き上げてきたスキルを武器に何度も這い上がってきた“小さな巨人”の、今後のストーリーに期待したい。

文●秋山裕之(フリーライター)

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