アングル:インドで倉庫建設ラッシュ、成長期待と「中国回避」で国際企業が注目

Dhwani Pandya Praveen Paramasivam

[オラガダム(インド) 18日 ロイター] - インド南部に広がる工業団地グリーンベース・インダストリアル・パークでは、インドの経済成長や中国からのサプライチェーン(供給網)分散化の動きを見越して新たな倉庫や工場が次々に建てられ、用地の取得は難しさが増す一方となっている。

アップルのサプライヤー、鴻海精密工業やドイツ自動車大手ダイムラーの工場に隣接し、米大手投資会社ブラックストーンとインドの不動産王ニランジャン・ヒラナンダニ氏が運営するこのグリーンベースの幹部S・ラグラマン氏は「ここは欧州や米国の企業にとってインドで最も手に入れたい場所の一つだ」と胸を張る。

ラグラマン氏によると、グリーンベース内の区画リースには、問い合わせが殺到している。「われわれは中国から拠点を移すことを検討している顧客少なくとも3件と商談中だ」という。

グリーンベースは増大する需要に対応するため、8億ドル(約1193億円)を投じて敷地面積を今の4倍の190万平方メートルに拡大することを目指している。

これはインドの経済成長率が8%強と先進各国を上回る中で、2023年10─12月に倉庫用賃貸用地の面積が過去2年で最高に達したという流れの一端に過ぎない、というのが不動産サービス大手コリアーズの分析だ。

インドで伝統的に使われきた「ゴーダウン」と呼ばれる事業用倉庫は薄汚く風通しも悪い上に、天井も低く、モディ首相が誘致したい外国の大手企業が求めている条件には合わない。

そのためグリーンベースなどインド各地で開発会社が新たに用地を仕入れ、面倒な買収手続きに悪戦苦闘している。

彼らが主な顧客として狙っているのは、米国などとの対立で地政学リスクが高まっている中国とは別の場所に製造拠点を広げたいと考えている製造業だ。電子商取引拡大の波に乗る企業なども、輸出拠点として、また人口14億人の巨大消費地としてインドに熱い視線を送る。

世界最大級の不動産開発会社パナトニのインド担当マネジングディレクター、サンディープ・チャンダ氏は「インドに進出する上で適切な局面だと考えた。向こう15─20年で非常に大きな成長余地があるからだ」と語った。

パナトニは首都ニューデリー近くに初の倉庫施設建設を進めており、高速道路や鉄道網へのアクセスの良さを売りにしようとしている。また1年以内にあと4カ所の工業団地との土地売買契約をまとめる計画だ。

チャンダ氏は、インドで新たに倉庫用にリースされる土地の面積は年間でわずか400万平方メートルと、中国の1900万平方メートルをはるかに下回っている分、これから伸びる余地があると強調した。

アベンダス・キャピタルの見積もりでは、自動で入庫と出庫ができるシステムを備えた「グレードA」倉庫の総面積も、中国はインドの3800万平方メートルの3倍以上だという。

<用地取得に苦戦>

コリアーズの分析に基づくと、インドの上位5都市で23年10─12月にリースされた倉庫は71万5000平方メートルと、過去2年で最大を記録。この間、グリーンベースに近いタミルナド州の州都チェンナイの「グレードA」倉庫供給量は336%も増加し、この5都市では最も高い伸びとなった。5都市平均伸び率の55%もはるかにしのいでいる。

自動車やエンジニアリング、小売り、電子商取引などの企業がさらなる成長をけん引する、とコリアーズは予想している。

グリーンベースのラグラマン氏は、デンマークの風力タービンメーカー、ベスタスがここで組み立てと倉庫の事業スペースを20%拡張したばかりで、主要拠点を中国に置いているものの「インドを代替地にしたがっている」と説明した。

倉庫所有で世界最大のプロロジスは、07年にいったん撤退したインドに戻ってきた。ジョセフ・ガザル最高投資責任者は「インドは力強く経済が成長していて、高水準の需要が存在すると信じている」と述べ、同社は「高成長と高い消費」の分野に重点を置いていると付け加えた。

ただ用地取得には複雑な権利関係を解決しなければならない上、賃貸料が追い着かないほど地価が高騰していることが不動産開発会社の収益に響いている。

不動産コンサルティング会社CBREの調べでは、グリーンベース付近の23年の地価は、バッキンガム宮殿の半分ほどの広さに当たる4ヘクタールで360万ドルと、20%も増加。ニューデリー近くの土地は上昇率が50%を超えたケースもある。

一方パナトニは、ニューデリー近郊の倉庫施設用地の買収を終えるまでに8カ月も費やした。チャンダ氏は、所有権の問題を解消するには時間がかかる、とぼやいた。

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