「大人を信用してはいけない」切ないが事実。進級・進学を前に親子で話そう性について【ママ泌尿器科医】

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今回は、子どもの性教育について。新しい環境がスタートする4月を前に、今一度、子どもとプライベートゾーンについて話てみるよい機会かもしれません。ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の「お母さん(お父さん)のためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#44です。

子どもの「イヤ」という言葉で、犯罪者の7~8割があきらめるという調査結果も。自分の身を守るためにこれだけは子どもに教えてほしい【専門家】

性的グルーミングとは

早いもので、息子はいよいよこの春小学生になります。楽しみである反面、不安もあります。一人で外を移動する機会が生まれ、親が把握しきれない人との関わりも出てくるでしょう。子どもの世界が大きく広がる一方、犯罪被害のリスクが高まる側面もあります。

子どもを性犯罪から守るための情報を得ようと、
『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か(斉藤章佳、幻冬舎新書))』
という本を読みました。
親としてドキリとすることがたくさん書かれていました。

まず、グルーミングという言葉をご存じでしょうか。
性犯罪と聞くと、「ある日突然知らない人に」というイメージを持つ方も多いでしょうが、ターゲットと時間をかけて親しくなり、信頼関係を築いた上で性的な接触を行うケースも少なくありません。性的な行為を目的に子どもをてなずけることを「グルーミング」と呼びます。

昔から「『お菓子をあげる』と言われても付いて行っちゃダメよ」という表現がよく使われます。子どもにとっての「アメ」を提供し、気を引くという点は共通ですが、グルーミングにおいてこのアメは時に「承認されたい」「誰かに話を聞いてほしい、理解してほしい」という精神的な欲求であることも重要です。子どもにとって加害者との信頼関係が形成されるため、被害が発覚しづらく長期化、深刻化に繋がります。

また、グルーミングを行う小児性加害者はカウンセラー顔負けの傾聴をするというのも重要な指摘です。
『相手の話を否定せず聴き、共感を示す。』
簡単なようでなかなか難しい振る舞いです。これは大人が相手であっても抜群の効果があるため、時に子どもだけでなく保護者までもが加害者への信頼感を持ってしまいます。
容姿、学歴、社会的地位、配偶者や子の有無、振る舞い。いずれも小児性加害者を除外する判断基準にはなりません。保護者自身が「この人なら絶対に心配ない」と100%の信頼をしないこと。時に保護者ごと取り込んでしまうという、相手の手口を知るだけでも大きな予防策になります。

「大人を信用してはいけない」

私は普段から子どもに「世の中には自分勝手な理由であなたの体を触ったり傷つけたりする悪い大人がいる」ということを伝えています。
また、その人は必ずしも知らない、怪しい男の人とは限らない。先生や友達のお父さんお母さんのことだってあるかもしれないし、困ったふりをして「助けてほしい」とあなたの優しさを利用するかもしれないということも話します。

子どもに「大人を信用してはいけない」と伝えるのは、切ないことです。本当に子どものことを大切に思っている信頼できる大人もたくさんいるのですから。しかし、現実に性加害の欲求をうまく隠して、よき大人として振る舞いながら子どもに近付く人間が存在するのも事実です。

子どもを守るために、プライベートゾーンの話は就学前までに伝えておきましょう。男の子であっても必須です。本書にも「小学校1~3年生の男の子を狙う」と語る加害者が少なくないことが書かれています。

「とてもやさしく話を聞いてくれたり、あなたのことを理解してくれるような人であっても、プライベートゾーンを触ったり触らせたり、また写真を撮るようなことがあれば『いや!』と言って、教えてほしい」と具体的に話します。

「嫌なことをされたら」という表現では不十分です。なぜなら、低年齢の子にとってキスやプライベートゾーンへの接触は必ずしも「嫌」という感覚と結びつくとは限らないからです。口頭で伝えるだけではなく、ロールプレイングで練習するのも効果的です。

進級、進学といった子どもの環境変化は性教育のよいチャンスです。「やろうと思って先延ばしにしてきた」「きっかけがつかめなかった」という方、ぜひ一歩踏み出してみましょう。

文・監修/岡田百合香先生、構成/たまひよONLINE編集部

●記事の内容は2024年2月の情報で、現在と異なる場合があります。

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