「コシノジュンコ 原点から現点」が新潟県立万代島美術館で開催中!

­こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。躍動するアートの世界を展覧会やニュースに注目したコラムでお届けする「今どきのアート」。今回、気になったのがこの展覧会です。

「JUNKO KOSHINO コシノジュンコ 原点から現点」が新潟県立万代島美術館で開催中。世界的なファッションデザイナーの華麗なる作品が集結した過去最大規模の展示は必見!

コシノジュンコ

ビジネスやカルチャーの世界で様々な広がりを見せた昭和という時代。その昭和に世界を席巻したデザイナーズブランドの先駆けであり、著名なファッションデザイナーとして知られるコシノジュンコの展覧会。

その斬新で華やかなファッションデザインは、Z世代の五感にも新鮮で刺激的に映ることでしょう。

服飾のアーティスト

私たちが身につける衣服のデザインを創造するファッションデザイナーは、服飾の世界に新たな風と刺激をもたらすアーティストです。

日常の生活の中で「ファッションを楽しむことができる」のも、ファッションデザイナーがいるからにほかなりません。

コシノジュンコは、山本耀司や高田賢三、金子功など世界的に著名なデザイナーを輩出してきた文化服装学院デザイン科に在学中、新人デザイナーの登龍門とされる装苑賞をなんと史上最年少で受賞。

1978年にはファッションの聖地であるフランスのパリコレクションに初参加。さらに中国、アメリカ、キューバなど各国でショーを開催して世界的な評価を得ているのです。

キューバでのファッションショー Cabaret “TROPICANA” HAVANA, CUBA 1996年

同展では、今なお、エネルギッシュな活動を続けるコシノジュンコを3つのテーマから探っています。

1.コシノジュンコの「原点」

東京を拠点にファッションデザイナーとしての活動を開始したコシノジュンコは 1966年に東京・青山にブティック「COLLET (コレット)」を開くと、その後、南青山キラー通りに移転してブティック「JUNKO」をオープンしました。

「キラー通り」という通りの名前は、コシノジュンコの命名とされているようです。キラー通りに足を運ぶたびに、ずっと、名前の由来が気になっていましたが、コシノジュンコの命名だったんですね。謎が解けて何だかスッキリしました。

装苑賞受賞作品 1960年

コシノジュンコは、岸部一徳や沢田研二がメンバーだった当時の人気グループサウンズであるザ・タイガースの衣装を手がけたことで、音楽や芸能の関係者、文化人などとの異業種交流が芽生え、新たな仕事の糸口ができていったのです。

1970年に開催された大阪万博では、3つのパビリオンユニフォームを手がけ、ユニセックス、機能性、斬新なデザインなどが話題となりました。

2. コシノジュンコの「対極」

1980年代からコシノジュンコが取り組んだのが「アール・フュチュール(未来の芸術)」という表現。これは、宇宙を構成している太陽、地球、月、大気、人間など、それらすべてを表現しようとする壮大な試み。

その取り組みの中で生まれたのが「対極」というコンセプト。それは、コシノジュンコのデザインの核心といえるもので、さらなる創作を支える重要な要素なのです。

コシノジュンコは、宇宙に存在し対極にある2つが相互に影響しながら新たな価値を創造していくと考えたのです。そこから、宇宙という完全なる神の創造物を象徴する「円」、人間がつくり出す合理的なものを象徴する「四角」、光や人知の方向を示す「三角」をベースにしながら、「光と陰」、「東洋と西洋」、「用と美」、「論理と感性」など対極的要素を共存・融合させて、万物の摂理を表現しようとしているのです。

POROPORO at GOBI Desert 2016年

ファッションデザインは、様々な生地や色彩と形がデザイナーの鋭敏な感性によって構成されて、独特のイメージとフォルムをつくり上げます。

中でも形は視覚にビビッドに飛び込んでくる大事な印象です。その大事な形が「対極」というコンセプトによって設計されていることに、コシノジュンコの繊細に思慮された深みと独創性を感じてなりません。

3. コシノジュンコの「現点」

コシノジュンコは、スポーツユニフォーム、オペラやブロードウェイミュージカルなどの舞台衣装にも活動の幅を広げていきますが2012 年から手がけている和太鼓エンターテインメント集団 DRUM TAOの舞台衣装は、累計数千着以上にのぼるとのこと。その創造エネルギーには脱帽です。

DRUM TAO “現代甲冑” 衣装 2018年

2015年の特別展「琳派誕生400年記念 琳派 京を彩る」(京都国立博物館 平成知新館)では、琳派400年記念祭の呼びかけ人の一人として、「能とモード」をテーマにオープニングイベントのファッションショーを開催。

その後も、2017 年にフランス国立ギメ東洋美術館で開催された「KIMONO」展やパリ市庁舎での「Theatre 能 et mode」など、日本の着物に現代のデザインを融合して日本文化のもつ魅力を発信し続けています。

世界に不安を与えた新型コロナウイルスによる外出と交流の制限下では、コシノジュンコは自身の原点であった絵を描くことに時間を費やしたといいます。

画家を目指していた高校時代の原点はそして「現点」となって、コシノジュンコの世界は「現点」から「未来」へと繋がっていくのです。

琳派コレクション デザイン画 2021年

学芸員からのひと言

「同展は、コシノジュンコの創造の原点である高校時代に描いた絵画や装苑賞の受賞作をはじめ、現在にいたる多彩で挑戦に満ちた活動の全貌を紹介する過去最大規模の展覧会です。衣装やデザイン画、写真パネル、映像演出など約200 点の展示をとおして、あなたの知らないコシノジュンコの創造の軌跡と魅力に出会えるはずです」(担当学芸員 澤田さん)。

北陸の旅行キャンペーンが始まった春に、新鮮な魚介と豊かな自然、そして旬なアートの展覧会が楽しめる新潟を訪れてみてはいかがでしょう。

豊饒の日本海に隣接する新潟県立万代島美術館

新潟県立万代島美術館

会期は 2024年5月26日(日)まで。展覧会の詳細は下記のURLから確認してください。

https://worcester2024.jphttps://banbi.pref.niigata.lg.jp/exhibition/open/a>

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