「折り紙を上手に折れたね。さすが女の子」…ジェンダー教育しても地域に帰ると、悪意のない一言が刷り込みを…

名前を呼ばれて整列する園児たち=鹿児島市のヴェリタスこども園

 国や自治体は少子化対策の柱に子育て支援を掲げる。少子化の背景には、ジェンダーギャップ(男女格差)があるとの指摘がある。性別による役割分業意識やイメージの決めつけは、出産や子育てにどう影響するか。鹿児島の今を探った。(連載「子育て平等ですか?かごしまの今」⑤より)

 地域の代表を男性が務めがちだったり、行事で大人が「女の子は室内の掃除をお願いね」と声をかけたり-。鹿児島県男女共同参画地域推進員を務める出水市の西尾久子さん(72)は、周囲に残る性別による役割分担意識が気がかりだ。

 県は第4次男女共同参画基本計画で「子どもの頃からの理解促進」を戦略的取り組みに位置付ける。家庭や地域、学校が一体となって、社会的、文化的な性差(ジェンダー)平等を進める大切さを盛り込む。草の根で広めているのが地域推進員だ。県内では2023年4月時点で41市町村の121人が務めている。

 西尾さんは子どもが学校などでジェンダー平等を学んでも、地域に戻るとギャップがあるとみる。「多くは悪意がなく、親切心が込められているのも分かる。伝え方が難しい」

 同市の児童クラブの支援員も務める西尾さん。「子どもたちには、まずは自分を大切にすることを伝え、性別に関係なく好きなことを『好き』と言えて、思ったように行動できるような声かけを意識している」と、自分自身ができることから実践している。

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 「○○さん、取りに来てください」。2月下旬、鹿児島市の認定こども園「ヴェリタスこども園」の保育士が、声をかけていた。笑顔で駆け寄る園児たち。同園は子どもたちを“さん付け”で呼ぶよう心がけている。

 園児の呼称は女児には「ちゃん」、男児には「君」を使うことが多かった。23年度から3歳児以上は「さん」、0~2歳児は「ちゃん」に統一した。多様性を尊重しグローバルに活躍できる人間育成を掲げた、性別にとらわれない保育の取り組みだ。

 呼称のほかにも、数年前から名簿や運動会の入場行進を男女混合に、発表会の遊戯曲は女児向け、男児向けと分けずに子ども自身で選べるようにした。どうすれば一人一人の個性を尊重できるか、職員間で意見を出し合って決めている。新平哲也園長(51)は「今の形が完ぺきと思わず、これからも見直し続けたい」と模索する。

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 子どもたちはいつ頃、どのようにして「女らしさ」「男らしさ」といった意識を持つようになるのか。幼少期のジェンダーに詳しい足利短期大学の林恵教授(53)によると、性別による固定観念(ジェンダーバイアス)がつくられるのは3歳前後と考えられている。性別の違いなどに気付き「男の子だからかっこいい」「女の子はかわいい」など社会的に期待される役割に沿った意見や行動が表れる。

 例えば女児に対して「折り紙がきれいに折れたね、さすが女の子」などと褒めると、子どもに「『女の子らしく』できたから、褒められた」との印象を与えてしまう。「大人自身が意識せずに役割意識を刷り込んでしまうことが問題」と指摘する。子どもに接する前に「『これは決めつけにならないか』と、いったん心の中で考えるだけで変わってくる」と助言した。

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