両親で「月40万円」も…年金だけでは厳しい「高齢の親」にかかる金額

(※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもの教育にはお金がかかる」ことは、ある程度覚悟ができているかと思いますが、「親の介護にもお金がかかる」ことはご存じでしょうか。「あなたたちには迷惑をかけないからね。安心してね」などという親からの優しい言葉を鵜呑みはしていないでしょうが、実際にかかってくる金額を目の当たりにすると、まさにどうしようもなくなるケースもあるのです。

親が病気やケガで入院…いくらかかるのか?

老いていくと、人の身体は誰しも弱っていきます。若い頃よりも病気やケガをする回数は多くなるでしょう。十数万円の年金でなんとか生活している親から、「節約して細々と暮らすから、私たちは大丈夫よ」と言われていても、現実を直視すると、安心することはできないはずです。

もし親が普段から「病院は嫌い。死ぬときは死ぬんだから。迷惑はかけないから、大丈夫」と言っていたとしても、実際、いざとなって親が病気で苦しんでいるのを目にして、「お母さんは病院が嫌いだから……」と見捨てることなどできるでしょうか。また、いくら病院嫌いな親であっても、転倒などで骨折などの大きなケガをおった場合、病院にかからないわけにはいけません。下記に親が入院した際の費用について見ていきましょう。

「令和4年度生活保障に関する調査」(公益財団法人生命保険文化センター調べ)によると、自己負担費用の平均は19.8万円です。費用の分布をみると、「10〜20万円未満」が33.7%、「5〜10万円未満」が26.5%、「20〜30万円未満」が11.5%、「30〜50万円未満」が10.1%となっています。

どのようなケガや病気で入院したかによって、日数や治療法などが変わるので金額の変動はもちろんありますが、「平均19.8万円」というのは、結構衝撃的な金額です。あらかじめ「そういうことはある」と心もお金も備えていなかった場合には、対処は難しいのではないでしょうか。

「お前たちに迷惑はかけたくないから。私たちが認知症になったり、動けなくなったりしちゃっても、一緒に暮らして面倒みたりしなくていいんだからね」

と、こんなセリフを親から言われている人もいるかもしれませんが、介護施設に入所させるのもお金がかかります。親の年金でまかなえればいいですが、実態はそうもいかないようです。

“利用者の所得が低ければ補助給付があり、数万から十数万円程度に抑えられますが、一般的な企業で定年まで勤め上げたホワイトカラーの人であれば、特別養護老人ホーム(特養)の個室ユニットに入所し、プライバシーも保ちたいとなると、月額20万円程度の費用がかかる計算になります。両親ふたりとも施設に入所するのであれば、2倍の40万円ほどが必要です。

つまり、配偶者や親を施設に預けるのであれば、本人の年金だけで介護費用をまかなうのはかぎりなく難しいのです。”杢野暉尚著『人生を破滅に導く「介護破産」』より

親の資産が「凍結」される…認知症の恐怖

「うちの親は貯金だけはちゃんとしてるみたいだから、なんとかなりそう」

と、考えている人もいるかもしれませんが、認知症対策は大丈夫でしょうか。認知症と診断されてしまうと、銀行は預金を凍結する可能性があります。こうなってしまうと、成年後見制度を利用するなどしないと、対処のしようがありません。

また、凍結される資産は銀行預金だけではありません。不動産も動かせなくなります。もし「実家を売却したお金で、老人ホームに入る」と思っていたとしても、先に認知症になってしまうと、売買も賃貸もできなくなってしまうわけです。

このように恐ろしい認知症ですが、対策としては家族信託の活用などがあります。「いつまでもあると思うな親と金」とは言いますが、本当に事前に直視して対策をうっておかないと、両方一気になくしてしまうので、注意が必要です。

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