【DeNA】攻守のコーチ陣も絶賛!「目の前の獲物に喰らいつく」2年目のドラ1捕手・松尾汐恩が“虎化”で狙う扇の要の座

☆コーチも絶賛するプロスペクト捕手

「目の前に来た獲物に全部喰らいつけって言われてるんで。やっぱり人は考えすぎるじゃないですか。でも虎やったら考えないで、もう来た瞬間に喰らいつくだけなんで」。プロスペクトキャッチャー・松尾汐恩は、チーム統括本部育成部の桑原義行氏から贈られた言葉「虎になれ」を今年のテーマに設定。本能の赴くままのプレーで輝きを放っている。
高卒2年目の今年は春季キャンプから一軍に抜擢され、オープン戦では打率.389、ホームラン1、OPSは1.035とバッティングでアピール中。「変に考えすぎてないというか、自分の頭の中ではある意味フレッシュな気持ちで打席に向かえているというのはありますね。それもあっていい結果に繋がってるのかなって思います」と野生動物のように感性を研ぎ澄ませ、敵と対峙している。

150キロ以上のボールにも力負けせず、変化球にも対応するなど数字以上のインパクトを残していることに、石井琢朗チーフ打撃コーチは「去年入ってきた時からいい感覚は持ってる選手なんで。これぐらいは打てる選手だと思ってます」とここまでの結果にも不思議はないとキッパリ。

具体的には「反応がいいですし、修正能力も高いです。また一発で仕留められる能力も持っています」とバッティングセンスを評価し、「打つだけだったら全然、すぐにでも試合で使いたいぐらいです」と打撃コーチ目線で言い切った。そのうえで「近い将来はクリーンアップを打てるキャッチャーとしてドラフトで獲ったと思うんで。それに応えられるだけの素質は、僕は持ってると思います」とチームの期待通りのポテンシャルを持っていると評価した。

守備面でもエースの東克樹やアンダースローの中川颯らとバッテリーを組み、キャッチャーとして日々研鑽を積んでいる。捕手転向は高校2年時で、マスクを被ってからまだ4年目。相川亮二バッテリーコーチは「去年見ていた松尾ではないことは確かです」と成長ぶりに驚きを隠さない。

松尾のキャッチャーとしての側面について、「すごくいい感性も持ってますし、勉強熱心ですし、 いろんなことを吸収しようとしています。そういう姿勢を彼はものすごい持っていますね」と取り組み方を評価。また「それはキャッチャーのことだけじゃなくて、バッターとしても、守備でもそう。だからこれからの成長度もきっと早いだろうなとは感じます」と予想以上の成長曲線を描くことを期待した。
とはいえ、キャッチャーは経験がモノをいうポジションだ。相川バッテリーコーチは、ファームで出場機会を増やす選択肢もあるとは言うが、「それで技術の部分であれば当然成長はしますけど、一軍で出ないと間違いなくキャッチャーとしての成長っていうのは別物だと思っています。一軍でシーズン中のゲームに出ていかないと、“そこ"の成長は0と言っていいぐらいかなと思います」と持論を展開する。
具体的には「一番キャッチャーとしてやらなきゃいけないことは状況判断のところなんです。それがしっかりできれば、リードや配球、いろんな意味でいい方向に向かえるんで」と分析した。続けて「今は何が優先なのかが重要」とし「バッターばかりを見ていたり、またはバッター一本でいい時にランナーを気にしてみたりとか、とんちんかんなことをやられると、なかなか起用することが難しくなってきてしまう」と、まず捕手としてのベーシックな感性を磨かないと、レギュラー取りどころかチーム内競争のスタートにも立てないと説いた。

☆レギュラーを獲るために

本人も「自分の一つのアピールポイントであるバッティングで、まずは結果を出さないといけない」としながらも「それよりもやっぱり、去年から課題にしている守備面っていうところは、よりアピールしないといけないところですね。 そこをしっかりまずは見てもらわないとやっぱり勝負できないと思います。そこの部分の成長がまずは第一優先で、その後にバッティングに繋げていきたいですね」と相川コーチとベクトルは一致。

今週にはキャッチャーのライバルである戸柱恭孝と東妻純平がファーム行きとなり、目標の一つであった開幕一軍も見えてきたが「まだ開幕してみないとわからないです」と浮かれた様子はない。いまは「モヤモヤした気持ちを持たずに、自分のやるべきことをしっかりやっていきながら、与えられたチャンスを掴み取りたいなって常に思っています。これからも同じ気持ちでやっていきたいです」と地に足のついた言葉が口を衝いた。

「打てて守れて走れる」。入団時に設定したニュータイプのキャッチャーになるために、19歳は“虎"のような鋭い爪と牙を、今日も研ぎ続ける。

取材・文・写真●萩原孝弘

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