「希望」の花復興の象徴に エアリーフローラ4年ぶり新品種

競り落としたエアリーフローラの新品種を眺める今井社長=金沢市公設花き地方卸売市場

 七尾市内に花店5店舗を構える七尾花正(古府町)は22日、金沢市公設花き地方卸売市場で行われた石川県産フリージア「エアリーフローラ」の新品種2色の初競りで、20本入りの各1箱を1万円で競り落とした。能登半島地震以降、同社は七尾の全避難所に花を飾って被災者を癒やしており、新たな彩りをプレゼントしたいと買い取りを決意。新品種を住民に披露し、花言葉である「希望」を届ける。

 4年ぶりの市場デビューとなった新品種は、シックな茶色の「エアリーマロン」と紫色で八重咲きの「エアリーダブルパープル」。いずれも通常の6~7倍に相当する1本500円で七尾花正が買い取った。金沢花市場でも、両品種が1箱ずつ競り落とされた。

 七尾花正の今井徹社長(52)によると、地震では各店舗の品物が倒れたり、ショーケースが割れたりした。断水が続く中、給水所から水をもらったり、井戸水をくんだりしてしのぎ、地震の1週間後に営業を再開した。

 ただ、客数は普段の10分の1にも満たず、数人だけしか来店がない日もあった。「花を余らせても仕方ない」と考えた今井さん。七尾市内の全避難所(最大25カ所)に持って行くと、避難者が「心が癒やされる」と喜んだため、その後も継続することにした。きれいな状態を保つため10日に1回ほど花を交換している。

 22日、エアリーフローラの新品種を手に取った今井社長は「繊細な色でグラデーションが効いている」と満足げ。多くの地元住民に見てもらうため、同日から自社4店舗や地元スーパーを巡回して展示する。今井社長は「少しでも癒やしになれば。春をたくさん感じてもらいたい」と話した。

 県などによると、両品種は生産者45人のうち2人が手掛けた。生育状況が良ければ数百~千本ほどを出荷できる見込み。県の担当者はエアリーフローラのキャッチフレーズ「旅立ちを祝う花」に触れ、「復興の願いを込めた象徴の花になってほしい」と語った。

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