捜査能力向上に人材育成 茨城県警、2団体と協定 サイバー犯罪根絶目指す

アルモリスの講師(右奥)からサイバーセキュリティーについて学ぶ県警職員(県警提供)

茨城県警は、サイバー犯罪の根絶に向けた人材育成を本格化させている。インターネットを悪用した不正送金の被害やコンピューターウイルスに関する相談が相次いでいるためで、本年度は2団体と人材育成に関する協定を締結。今春の組織改編ではサイバー犯罪の捜査に対応する専門2部署も新設し、捜査能力の向上を目指す。

サイバー犯罪は、コンピューターやインターネットを悪用した犯罪の総称。インターネットバンキングの不正送金や身代金目的のウイルス「ランサムウエア」の被害をはじめ、関連する相談は昨年1年間で3千件を超えた。

ネットバンキングの不正送金事件では、本物そっくりのサイトに誘導して金融機関口座の暗証番号などをだまし取る「フィッシング」と見られる手口などが横行。県内の発生件数は昨年1年間で90件、被害総額は1億2700万円といずれも過去最多だった。こうした状況は全国でも同様で、被害総額は87.3億円に上っている。
県警は昨年、サイバー戦略推進室を発足させて人材育成やセキュリティー意識の向上を急ぎ、昨年10月には経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)と協定を締結。今月18日にはサイバーセキュリティーの学習機会を提供するアルモリス(東京)とも同様の協定を結んだ。今春の組織改編でも「サイバー企画課」「サイバー捜査課」を新設。事件捜査の支援に向け、人材育成や通信履歴解析など態勢増強を図る。

サイバー犯罪の捜査手法について、アルモリスの鎌田敬介専務CTOは、犯人が相手を脅迫するコメントを送信したり、ウイルスを残したりする行為ごとにデータ履歴が残ると指摘。「データを分析すれば犯人の居場所や名前、メールアドレスが見えてくる」と話す。

同社は捜査員らを対象とした講習会も開き、収集したネット上の公開情報から犯罪者の個人情報を特定するトレーニングなどを提供している。

県警はこうした講習などを通して捜査員らに専門的な知識を習得させ、インターネットなどが絡むさまざまな事件捜査への対応能力向上を図るとともに、国内外のサイバー犯罪に関する情報共有も進めたい考え。

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