常歩をレベルアップさせる秘訣

今回はすべての歩様の基礎であり、最も大切な歩様でもあるとされている常歩(なみあし)について考えていきましょう。皆さんは、速歩に移行する前に「もっと元気よく歩かせて!」とインストラクターから指摘を受けたことはありませんか?常歩には「いい常歩」があるようです。この記事では「いい常歩」とはどんな常歩なのか、どんなふうにすれば「いい常歩」にレベルアップできるのかについて探っていこうと思います。

常歩の重要性を知る

常歩は英語でウォーク。つまり「歩き」です。しかし、ただの歩きにも質の違いがあることには、初心者の方もお気づきではないでしょうか。

ダラダラ歩く人とササっと歩く人がいるとします。その状態でよーいドンがかかり、走らないといけないとしたら、どちらの人の方が早く走り始めることができると思いますか?やはりササっと歩いている人の方が早く走りだしそうですよね。馬も同じです。常歩の質は、速歩にでも駈歩にでも移行するときに大きく影響してきます。いい常歩を維持できれば、別の歩様に移行するときもスムーズになるんです。つまり、レッスンの最初の段階でいい常歩まで持っていけば、そのあとがとても楽になるんですよ。

もう少し具体的に考えてみましょう。馬が何となくダラダラ歩いているのは、いい常歩だとはいえません。ダラダラしているということは、前進気勢があまりないということになります。前進気勢とは、馬が自ら前に行こうとする力です。特に駈歩は、馬が前に行こうとする力を溜めて、パワーがはじけそうなタイミングで合図をして発進するので、前進気勢がないと絶対に駈歩がでません。

逆に前進気勢のある常歩は「いい常歩」だということができます。では、前進気勢のある常歩とはどういう常歩なのでしょうか。感覚が人によって違うので難しいところではありますが、筆者にとっては速歩に移行する直前の常歩が「いい常歩」のイメージに近いです。これ以上、合図をしたらすぐに速歩に移行しそう、という手ごたえのある状態です。

こちらもどうぞ!

常歩の重要性 | 「みんなの乗馬」ブログ (minnano-jouba.com)

【重要!常歩(なみあし)】初心者にとって一番簡単そうに見える「常歩」、実は一番重要! (equia.jp)

馬の肩や肢の動きを見る

いい常歩かどうかは、馬の動きからも確認することができます。ダラダラ歩いているときは、揺れも少なく、スピードも遅く、リズムも安定していません。脚の合図にも反応しない重い場合が多いでしょう。「止まったら怒られるから、仕方なく動いている」という感じの歩きです。いい常歩の場合、脚にもよく反応して、歩きのテンポも速く、リズムも安定したものになっていきます。

分かりやすいのは、馬の首が動いているかいないかです。テンポが速くなって、前進気勢が出てくると馬は首を使って歩き始めます。まずは、馬がクビを使うような歩き方を求めて合図をしていきましょう。

また、余裕がある方は肩や肢の動きを見てみましょう。あまり前をのぞき込むと危ないので、視線を下に向けて、馬の肩を見て肢の動きを確認してみます。ダラダラ歩いているときとササっと機敏に歩いているときだと、同じ歩きでも肩の出方の大きさが全然違います。

合図での脚の使い方

合図は常に弱いものから試していきましょう。馬によっては、ちょっと触れるだけや脚全体で馬体を少し圧迫するだけで、反応する馬もいますので気をつけましょう。馬が最初に動いてくれたときの合図の強さを0として、反応がなかったり薄かったりすれば、少しずつ強くなるように使います。反応があったら、すぐに合図を止めて、また遅くなったり、歩度が落ちそうになったりしたら、また合図を入れるしましょう。反応が良くなったら、-1や-2など、さらに弱い合図も試してみましょう。最初より弱い合図で動くようになっているのは、反応が良くなっている証拠。いい傾向です。

ただし、ずっと同じような合図だと馬も慣れてきて、飽きちゃうかもしれません。そんなときは、左右の脚を交互に使う合図を試してみてください。馬の左肢が前に出たときは右の脚、馬の右肢が前に出た時は左の脚で合図をします。一完歩ずつ、歩度が伸びるので、乗り手も楽しいですよ。

馬の性格によってもバラツキがありますが、乗り手の合図に慣れてくると、物見をするなど集中力を欠いてくる馬もいます。そんな馬に対しては、左右の脚で別々に合図を送るだけでも、「あれ、今までと違う合図だ」と思われて、馬が乗り手に集中しなおしてくれることも。飽きっぽくて、マイペースな馬たちを飽きさせないようにする方法でもあるんですよ。

こちらもどうぞ!

キックなの?圧迫なの?どっちが好きなの?/脚の色々な使い方 (youtube.com)

まとめ

いかがでしたか。常歩は全ての歩様の基礎です。いい常歩なくして、いい速歩やいい駈歩はありえません。また、馬がぴりっとしている「いい常歩」やダラダラしている常歩だけではなく、馬なりでも馬がリラックスしている「いい常歩」もあり、見た目以上に奥の深い歩様です。理想の常歩を出せるよう、馬の雰囲気を少しずつ感じとっていけるようになるといいですね。次のレッスンでは、是非、常歩のレベルアップを意識してみてください。もしかしたら、もう少し楽に移行できるようになるかもしれません!

© 株式会社ワールドマーケット