浜通りに200キロの自転車道 国指定目指しルート案

 県は22日、日本を代表する自転車道として世界にPRする「ナショナルサイクルルート(NCR)」の指定を目指すルート案を発表した。いわき市から新地町まで沿岸部を縦断する約200キロのコースで、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の光と影を感じられる唯一無二のルートとなる。ルートをはじめ、走行環境や受け入れ環境などを国土交通省が評価、要件を満たせばNCRの指定が受けられる。県は2025年度末の指定に向け、官民一体となった取り組みを推進する方針だ。

 大熊町で開いた「ふくしま浜通りサイクルルート推進協議会」で示した。NCRの指定を目指すルートは【図】の通り。既存のサイクルルートをつなげる形で設定した。ルート名は「ふくしま浜通りサイクルルート」で、観光資源と雄大な太平洋や里山などの自然を体感できるコースにした。

 ルート上にはアクアマリンふくしまや湯本温泉(いわき市)など豊富な観光資源に加え、東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)や震災遺構「請戸小」(浪江町)もあり、広域的な周遊に結び付けていく。県はサイクルルートとして活用を図りながら、復興の歩みを発信する独自の旅行施策「ホープツーリズム」の拡充にもつなげたい考えだ。

 NCRは申請制ではなくまず国交省が候補ルートを選定するという。その後、第三者委の審査を踏まえて国交省が指定する。指定要件には▽安全なルート▽多様な交通手段に対応したゲートウエー(玄関)▽緊急時のサポート▽容易に情報を得られる―といったさまざま要件がある。このため県は要件を満たすために各種整備を急ぐ構えだ。例えば走行環境の整備に向けては、6月末までに整備計画を策定。安全で快適に走行できたり、迷わずに通行できたりする環境を整えていく。

 サイクルルート利用者の玄関口となる「ゲートウエー」の候補には、いわき市の湯本地区や、サイクリスト向けの無料駐車場などを整備しているワンダーファーム、新舞子ハイツ(いわき市)を例示。今後、走行に必要な情報が得られたり、着替えや自転車の組み立て用のスペースを確保したりといった要件を満たすため関係機関と調整を進める。

 併せて県は、NCRとは別に、阿武隈高地のアップダウンを楽しめる約200キロの山側ルートも定めた。

 ロゴマーク発表

 会合では、ルートのロゴマークも発表した。阿武隈高地や太平洋といった浜通りを象徴する姿を自転車で走行するイメージを表現した。

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 ナショナルサイクルルート 日本を代表するサイクルルートとして国内外にPRするために国土交通省から指定を受けたルート。自転車人気の高まりから、国内外からの走行が見込まれる。広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道サイクリングロード」(延長約70キロ)や、琵琶湖を反時計回りに一周する約200キロの「ビワイチ」など国内6ルートが設定されている。

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