SEKAI NO OWARI、アルバム『Nautilus』が2位獲得 キラーフレーズ多数、バンドの実像示す一枚に

参照:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2024-03-25/
3月25日付(3月19日発表)のオリコン週間アルバムランキングによると、WEST.の『AWARD』が推定売上枚数234,128枚で1位を記録。その後、SEKAI NO OWARI『Nautilus』が53,828枚で2位、原因は自分にある。『仮定法のあなたへ』が52,397枚で3位と続いた。

今回取り上げたいのは、2位につけた『Nautilus』。『scent of memory』以来約2年半ぶりの発売となるこのアルバムは、「第64回日本レコード大賞」を受賞した「Habit」をはじめ、TVアニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)主題歌の「最高到達点」や、ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)主題歌「ROBO」などを含む計12曲が収録されている。

サウンド面に注目すると、アップテンポの軽快なビートに乗った祝祭感のあるアレンジが印象的な「最高到達点」や、繊細なストリングスの音色に心が安らぐ美しいバラード曲「Diary」、バグパイプが高らかに鳴り響く「ターコイズ」、メロウなムードを漂わせる「ROBO」など、多彩な楽曲が揃う。バンドとオーケストラが融合した壮大なサウンドの中で、「深海魚」のように随所に大胆なピアノアレンジが挟まれる点も目を引く。

なかでも1曲目の「タイムマシン」には魅了された。何と言ってもメロディが美しい。ピアノを主体とした王道のバンドサウンドの上で軽やかに踊るような美麗なメロディラインを、ボーカルのFukaseが優しく歌い上げる。こうした思わず口ずさんで歌いたくなるような自然なメロディは、同バンドの作品すべてに通ずるものだ。その上でこの曲は歌詞もいい。〈君〉との別れを経験して苦しい思いをしている〈僕〉が、〈君に出逢った瞬間〉まで戻ることで〈これで良かったんだ〉と思い直して、最後に〈僕を見つめていこう〉と前を向く。痛みを抱える人に寄り添い、ポジティブな方向へと向かわせるようなこうした歌詞に、1曲目からいきなり心を掴まれた。

総じて今作はメロディも歌詞も洗練されていて、ソングライティング面が研ぎ澄まされていると感じた。しかもキラーフレーズが多い。

〈「可愛いけれど淘汰されるわ/時代が合わなくなるからよ」〉(「Eve」より)

〈逃げることで 変わる事で/生き延びてきたんだ/アイツらより長く〉(「深海魚」より)

〈欠けてるところだけ指を差す/視力検査みたいな世界で/よくみんな壊れないなあ〉(「ROBO」より)

ここに挙げたものはほんの一部で、こうした尖ったフレーズが作品の所々に散りばめられている。タイアップ曲が多くどれも独立した一つの作品ではあるものの、それでも不思議と一貫した共通性があり、アルバムを通して現在の社会や世の中に対する同バンドの強いアティチュードを感じた。そして、彼らはそうした強いメッセージ性と音楽的なポップセンスとの両立が巧みだ。その意味で最も完成度が高いのがやはり「Habit」だろう。

〈君たちったら何でもかんでも/分類、区別、ジャンル分けしたがる〉
〈すぐ世の中、金だとか、愛だとか、運だとか、縁だとか/なぜ2文字で片付けちゃうの〉

歌詞にはこうした人間の習性を批判するような攻撃的なフレーズがずらりと並ぶ。一方で、韻を踏んだり、リズミカルなサウンドアレンジでまとめあげることで、全体的な聴こえ方としてはノれるポップソングの佇まいを見せている。このバランスが見事だ。

SEKAI NO OWARIと言えば、ファンタジー感のある明るいポップなイメージを持つ人も多いはず。しかし、実際にはその中に強烈な毒や棘を持っている。今回のアルバムは、そうした彼らの実像が、非常に洗練された形で表現された一枚だと感じた。
(文=荻原梓)

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