ブレード、マレット、ネオマレット…パターの形状一番人気は?/女子プロクラブ考VOL.8

ルーキーの政田夢乃はオデッセイ「Ai-ONE ジェイルバード」を使用(撮影/服部謙二郎)

女子プロたちがどんなクラブを使って、さらにどんなスペックなのかは同じヘッドスピード帯の我々(男子アマ)のクラブ選びに大いに参考になる。定期的に行うクラブ調査で採取した膨大なデータを元に、女子プロのクラブの傾向をギアマニアが分析・検証していく。8回目はパター選びについて。ヘッド形状とネック形状でそれぞれ傾向を割り出した。

一番人気のヘッド形状はやはり「ブレード型」

ヘッド形状を、ブレード型、マレット型、ネオマレット型の3種類に分類。今回調査した41人中24人がブレード型を使用していた。ブレード型は、名器として知られるピン社の「アンサー」が元祖。いわゆる“トウヒールバランス”で、トウとヒールに重量を配置しているのが特徴。絶大な人気を誇るスコッティキャメロンの「ニューポート」も、「アンサー」シリーズのオマージュだ。

半数がブレードだった(左上から時計回りに稲見萌寧、勝みなみ、川崎春香、岩井千怜)*昨秋時点

稲見萌寧をはじめとした多くの女子プロが使ってブームとなったテーラーメイド「トラス TB1 トラスヒール」もブレード型。形状が同じテーラーメイド「TP コレクション HYDRO BLAST ジュノ TB1」や「TP コレクション HYDRO BLAST ジュノ TB2」を含めると、同社のブレード型は4人が使用している。

ブレード型といえば、難しそうなイメージを持つゴルファーは多い。実際、ヘッドの奥行きがないので、重心深度は深くできない。ただし、トウヒールにウエートを配置していることで慣性モーメントは大きく、ヘッドがブレにくく意外とミスには強い。また、重心深度が浅いことで、打感がダイレクトに伝わる側面も無視できない。操作性も高く、男子プロには依然として人気が高い。

流行り形状が移り変わる「ネオマレット型」

菊地絵里香ら5人が使用するオデッセイ 「ホワイト・ホット OG 2-BALL BLADE」

続いて使用者が多かった「ネオマレット型」(10/41人)。元祖ネオマレットは、オデッセイ「ホワイト・ホット 2ボール」で、マレットを更に進化させた形状ということでネオマレットと呼ばれるようになった。2ボールの歴史は古い。ショートゲームを理論的に教えるデーブ・ペルツ氏が作った「ペルツパター」が元祖。そのゴルフボールを3つ並べたような形状のパターを作る際に取得した特許を、オデッセイが買い取り、2ボールの開発に活かしたのだった。

ネオマレットで一番人気があるのは、すべてのジャンルを含めて一番使用者が多いオデッセイ 「ホワイト・ホット OG 2-BALL BLADE」で、山下美夢有や菊地絵理香ら5名が使用(昨秋時点)。ペルツパターのようにターゲット方向に対して垂直(タテ)と平行(ヨコ)を意識しやすい。T字型をイメージしやすくアライメントが取りやすいのだ。もちろん重心深度も深く、ミスに強い。2ボールブレードは、細かい調整がしやすいクランクネックを採用。フェースの開閉具合やオフセット量などをプレーヤーの好みにカスタマイズしやすい点も、人気の要因だろう。

ロリー・マキロイに憧れてスパイダー形状を採用する岩井明愛

その他のネオマレット型を見てみよう。

ツノ型と呼ばれる「#7」は、大里桃子(オデッセイ「ホワイト・ホット VERSA SEVENDB」)ら3人が使用。ボールにラインを引くプレーヤーは、2本の長いサイトラインが意識できる「#7」形状が構えやすいはず。

岩井明愛がロリー・マキロイに憧れて使用している「スパイダー ツアーX」。この"蜘蛛型”は他メーカーも触発されて似たような形状のヘッドが生まれるなど、一世を風靡(ふうび)した時代もあった。が、今は少数派。

ネオマレットの特徴は、従来のマレットよりもヘッドの後ろ側が伸びているところ。サイトラインを長く伸ばせたり、2ボールのように円を足すこともできるなど、アライメントが取りやすいのが特徴。また、重心深度は自ずと深くなり、ミスヒットには強い。一方で、神谷そらが使うオデッセイ「2-BALLELEVEN TRIPLE TRACK」を含むELEVENシリーズは、重心深度が浅め。テークバックを引きやすく、ダイレクトな打感を実現している。ネオマレット型の寛容性と構えやすさ、ブレード型のダイレクトな打感を併せ持った最新テクノロジーパターといえるだろう。

意外と少ない!?「マレット型」

高慣性モーメントによる優れた安定性と寛容性を両立するマレットタイプ

マレット型は41人中6人と、思ったよりも少数。

マレットの人気を作ったのが、丸山茂樹や谷口徹が長く使ったオデッセイ「ホワイト・ホット#5」と、キャロウェイがオデッセイを買収する前にヒットした「ロッシー」だろう。実際にこの2つが人気形状だ。オデッセイ「ホワイト・ホット OG ROSSIE」シリーズは、原英莉花、西郷真央、藤田さいきら成績上位者が使用しているため、印象が強い。一方の「#5」形状は、三ヶ島かなが使用中だ。マレット型は、ブレード型が持つような打感や操作性を保ちつつ、重心が深いパターが持つようなミスヒットに強い部分も併せ持つ、まさにバランスの高さが魅力だろう。

人気のネック形状はどれ?三角ネックの隆盛具合は?

続いてネック形状、大きく5つに分類してみた。

ブレード型の代名詞といえる「クランクネック」、フェースセンターに配置される「センターネック」、ヘッドにダイレクトにシャフトを装着する「ダブルベントネック」、ショートスラントと呼ばれる「スラントネック」、そして話題の「三角ネック」の5つだ。

左上から時計回りに「クランクネック」「三角ネック」「ダブルベントネック」「スラントネック」「センターネック」

41人中18人がクランクネックを使用。ネック部が曲げやすく、調整の自由度が高い。シャフトもストレートで、ホーゼルの中に入れられるので、様々なシャフトを装着できるメリットがある。また、ヘッドのヒール側にネックを装着するため、重心角は大きめ(大きい方がヘッドを開閉しやすい)。ストローク中にアークを描いて打ちたい人から、真っすぐ動かしたい人まで万人向けだ。

他に4人がスラントネックを選んでいた。一番重心角が大きくなるネックで、L字パターのようにフェースの開閉を意識してストロークできるのが魅力。インパクトでフェースが開きやすいデメリットはあるが、左に引っかけにくく操作しやすいメリットもある。

同じく4人がセンターネックを選択。シャフトの延長線上にフェースセンターがあるため、芯でヒットしやすいメリットがある。しかし芯を外した場合、シャフトを軸にフェースが回転しやすく、ミスヒットの許容は少ない。さらに6人が、ダブルベントネック。シャフトを2回曲げることで、フェースバランスにしている。フェースの開閉がしづらいので、ヘッドを真っすぐ動かしたい人に向いている。

そして残りの9人が三角ネック。ネックが三角形となっている分、剛性が上がり、ヘッドがブレにくいといわれる。が、実際は20年以上前から三角ネックは存在していて、日本以外では流行っていないこともあり、メーカーが声高に主張するほどの優位さは正直感じない。

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パターは他のクラブと違って気軽に試打ができ、販売が終了したモデルでも中古ショップならば打つこともできる。打感や打音、アライメントの取りやすさ、ミスヒットの強さ、そして芯への当てやすさなどをチェック。全てが100点満点のパターはないので、どの要素を重視するかで選んでほしい。運命の出合いがきっと訪れるはずだ。(文・田島基晴)

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