森田まさのり、「アシくんすまん。」シリーズが加速中 断ち切り確定部分の作画に「ほんまになんでや?」

漫画家の森田まさのり氏が自身のXで展開している「アシくんすまん。」シリーズが再開された。本シリーズはページ内に余白を作らない、いわゆる「断(裁)ち切り/断(裁)ち落とし」になったコマで、「アシくん=アシスタント」が丁寧に書き込んだにもかかわらず大幅にカットされてしまった原画を順次公開していくもの。2月18日にスタートし、3月21日時点で「その16」がポストされている。

製本の際に空白が残らないよう、はみ出し部分まで描き込むことは必要だが、森田氏は「描き込ませすぎ」という自覚があるようで、「観客の顔までちゃんと描いてんのになぁ…。」「無駄な仕事させてるなぁ…。」と、さかのぼって申し訳なさを語ってきた。きわめつけは3月20日にポストされた「その15」だ。

このポストで森田氏は、新宿の風景を描いたあるページについて、「背景も切れてるけど、謎なのは一コマ目の雑踏カット。僕が描いてるけど、よく見たら一番上1センチほど裏からセロテープで紙を付け足して、切れるのわかってるのにわざわざ上に描き足してるとこ。なんでや?ほんまになんでや?」と語っている。原画を見る限り、確かに謎の作業が生じているようだが、一見無駄に見えるこだわりが作品のクオリティに影響していたと確信してしまうような、週刊連載とは思えない細やかな描き込みが印象的だ。

一方で、「その16」で取り上げられた『ROOKIES』の一コマでは、原画ではガラクタだらけの野球部部室に女性のポスターが描かれているが、掲載時にはこれがカットされている。森田氏は「ほんますんません…!」と謝っているが、こうして画面外にもその場(男くさいい部室)のコンセプトが貫徹しているのか、と唸ったファンは多いだろう。

誌面に掲載されなかったことを考えると「無駄になってしまった作業」と言えるかもしれないが、こうして原画が公開されると、手間を省くことよりも作品の質を重視してきたこだわりが見え、断ち切られたコマの「外」に広がる世界に思いを馳せることができる。そんな視点で、森田氏の名作を読み返してみてはいかがだろうか。

(小原良平)

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