40年の時を経て映画化 飯嶋さんのデビュー小説「プロミスト・ランド」

飯嶋和一さん

 山形市出身の作家飯嶋和一(かずいち)さんのデビュー作「プロミスト・ランド」が約40年の時を経て実写映画化され、6月14日から山形と鶴岡で先行公開されることが決まった。マタギ文化を題材にした作品で、撮影は鶴岡市や西川町など本県で行われた。同29日から順次、全国で公開される。

 飯嶋さんは1983(昭和58)年に「プロミスト・ランド」で第40回小説現代新人賞を受賞し、デビューした。本作はマタギの伝統を受け継いできた山間部の過疎集落で、禁じられたクマ狩りに2人で挑む若者の姿を描いた。閉鎖的な暮らしに嫌気を差しながら、自分の生き方を見つけられずにもがく主人公・信行を杉田雷麟(らいる)さんが、信行の兄貴分でマタギの誇りを貫こうとする礼二郎を寛一郎さんが演じる。監督は阪本順治監督らの下で研さんを積んだ飯島将史さんが務める。

 撮影は昨年4~5月に、大鳥地域を中心とした鶴岡市内や月山近くの西川町志津のほか、最上町や南陽市で行われた。飯嶋さんは「この映画には、明治時代以降、われわれが進んで失ってきた自然への畏敬と共生への願いが込められている」、飯島監督は「原作小説は40年前の東北の地を舞台に、マタギ文化特有の狭い世界を描いているが、今の時代に通じる作品」などとコメントしている。

 映画はさまざまな「良い日」に生きる人々の物語を映画で伝える「YOIHI PROJECT」の一環で、「せかいのおきく」に続く第2弾。先行公開は山形市のムービーオンやまがたと鶴岡市の鶴岡まちなかキネマで行われる予定。

映画「プロミスト・ランド」の一場面(C)飯嶋和一/小学館/FANTASIA

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