無実のドーピング違反で19カ月間出場停止!無罪となった31歳女子テニス選手が再起に向けファンに呼びかけ<SMASH>

年齢を重ねるごとにトップアスリートとして活躍できる時間は少なくなっていく。

元世界ランキング77位の英国女子テニス選手タラ・ムーアは、ドーピング違反の罪で約19カ月にわたりツアーへの出場が許されなかった。だが昨年12月に開かれた独立裁判所で「禁止薬物は汚染された肉を介して摂取されたため過失はない」と判断され無罪が確定。晴れて自由の身になったのである。

だが、現在31歳になるムーアにとって、新たな戦いが待っていた。

テニスツアーに参戦する場合、選手自身の世界ランクによって出場できる大会グレードが決まってくる。ランキングは参加した大会の成績に応じてポイントが与えられ、その累積ポイントにより順位が決まる。だが獲得したポイントは1年で消滅するため、約19カ月にわたり大会不出場のムーアの累積ポイントはゼロ。ランキング表にその名前はない。そのためゼロからの再スタートとなるのだ。

無罪を勝ち得たあとSNSを通じて「19カ月の失われた時間。私の名声やランキング、生計がゆっくりと消えていった」と綴りながらも、「修復するには19カ月以上かかるだろうけど、これまで以上に強くなって戻ってくる」と前向きな姿勢を見せていた。

そんなムーアがキャリア再建に向けて3月22日、クラウドファンディングを立ち上げたことを自身の公式SNSを通じて発表した。

「ご存知のとおり、私の復帰に向けた道のりは簡単ではなかったし、今後も簡単ではないでしょう。 私は、起こったことすべてに関連する費用を支援するために、『go Fund me』を始めました。もし可能であれば寄付とシェアをお願いします。そうでなくても私を嫌いにならないでください。 良いことだけです! 本当にありがとう」
元世界1位のシモナ・ハレップ(ルーマニア)は、ドーピング違反による資格停止処分が4年間から9カ月に軽減され、現在開催中の「マイアミ・オープン」(アメリカ)で復帰を果たした。彼女のようなスター選手であれば、例えランキングが消滅していても大会側はワイルドカード(主催者推薦)を使い出場させてくれる。

だが、ムーアのようなさほど有名でない選手には、ワイルドカードによるサポートは発生しにくいのが現実だ。厳しい状況を切り抜けるために彼女は次のよう綴る。

「知らない人のために説明すると、テニスはものすごくお金がかかるスポーツなんです。コーチを雇うだけでも週に3~5千ドル(約45~75万円)はかかるし、ハードなトレーニングをサポートする優秀なフィットネストレーナーや理学療法士も必要です。だからこそ、どんなレベルのサポートでも助けになります。たとえそれが大した額でなくても、あるいは大した違いにはならないと思っても、私のトレーニングや食費、旅費、継続的な弁護士費用などに使われます。またすぐにウインブルドンで会えることを願っています」

『Help Tara get back to the Grand Slams!』(タラのグランドスラム復帰に力を貸してください!)と題されたクラウドファンディングには、日本時間の23日・12時の時点で3千783ドル(約57万円)が寄せられており、2万ドル(約300万円)をゴールに設定している。果たしてムーアは、ファンのサポートを受けて再び世界ツアーの舞台に立つことができるのか、注目したい。

構成●スマッシュ編集部

© 日本スポーツ企画出版社