「実働5時間」林業の働き方を一新 グッドアクションアワードに和歌山・田辺市の「中川」

表彰を受ける「中川」の中川雅也さん(左)=東京都千代田区で(リクルート提供)

 全国の企業や自治体が取り組む職場の優れた活性化策を表彰する第10回「GOOD ACTION(グッド アクション)アワード」(リクルート主催)で、和歌山県田辺市の林業「中川」が入賞した。「実働5時間」など重労働のイメージがある林業の働き方を一新し、全国から人材が集っている点が評価された。林業での受賞は初。

 国勢調査によると、2020年の県内林業就業者数は1002人で、1960年に比べ90%減少している。林業は労働災害率が6%で、全産業平均より2倍以上高い。「危険」「きつい」というイメージが根強く、なり手不足が深刻化している。

 「中川」では「1日6時間(実働5時間)労働のフレックスタイム制」「休みを取りやすい日当制」を導入。2カ月に1度査定して評価を迅速に給料に反映し、最高で月収60万円を実現した社員もいる。全従業員の給料を公開して評価の透明性を高め、新入社員も将来の活躍イメージを描きやすいようにしている。

 また人件費50%以上、純利益率10%以下、従業員雇用は30人までという目標を定め、自ら成長限界点を定める経営で「労働生産性を追求しない。無理をしない林業」を進めている。

 そのため、社員の独立志向を歓迎。起業する際は、社内から2人まで引き抜くことができる「ヘッドハンティング制度」まである。これまで9都県で7社が創業している。

 こうした取り組みが知られるようになり、全国から人材が集まるようになった。現従業員27人のうち13人は他県からの移住者となっている。

 受賞を受け、創業者の中川雅也さんは「林業だからこそできる働き方を徹底した結果。今後は起業を促進し、全国に私たちのような会社を増やすことで、林業を日本で一番自由に働ける職種にしたい」と話している。

 「アワード」は、「働く場」を盛り上げるために独自に実施している取り組みに光を当てるプロジェクト。表彰式は5日、東京都であり、「中川」を含む3社が入賞、4社が第2席の賞を受けた。入賞の取り組みはいずれも人手不足が深刻な業界で大幅に労働時間を削減し、新たな働き方を生み出している。

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