佐野市がアニメの聖地に? 大人気漫画「黒執事」ゆかりの日本クリケット協会 監修時のエピソードを紐解く

ポスターと並んでキャラクターと同じポーズをとる宮地さん

 全世界シリーズ累計3500万部を超え、世界中で人気を集めるロングセラー漫画「黒執事」のアニメ化6作目となる「寄宿学校編」が4月、放送開始される。寄宿学校編では、2023年10月にロサンゼルス五輪の追加競技に承認された「クリケット」シーンが作品の見どころの一つとなる。原作から監修を行う日本クリケット協会事務局長の宮地直樹(みやぢなおき)さん(45)に監修時のエピソードやクリケットの魅力を聞いた。

 黒執事の時代設定は19世紀、クリケット発祥の地とされる英国が舞台だ。「女王の番犬」として裏社会の汚れ仕事を請け負う名門貴族「ファントムハイヴ家」の執事セバスチャン・ミカエリスと13歳の主人シエル・ファントムハイヴがさまざまな事件を解決していくストーリーとなっている。

 女王からの命を受け、英国屈指の名門寄宿学校に潜入する「寄宿学校編」はXIV(14)巻~XVⅢ(18)巻にあたる。学校の伝統行事として登場するクリケット大会などを監修した宮地さんは、XVⅡ(17)巻のあとがき漫画にも登場する舞台裏の立役者だ。

 クリケットを描くにあたり、作者の枢(とぼそ)やな先生が遠征取材を行ったのが栃木県佐野市に本拠地を置く日本クリケット協会。宮地さんは「枢先生がすごく熱心に調べて、しっかり理解して書こうという気持ちが伝わってきたので、こちらも全力で監修させてもらった」と当時を振り返る。

 監修の話が来た当初は作品を知らなかったが、「読んでみるとすごく面白くて、携われることがうれしかった。格式高い作風がクリケットの雰囲気と似合うと感じた」と話す。

 宮地さんいわく、クリケットは「フィールド上のチェス」と言われるほど、戦略性が高いスポーツ。力が強い選手だけが活躍するのではなく、各選手の特性を生かした戦い方が見どころの一つなのだという。

 黒執事のクリケット大会は「競技を熟知している人でも満足できる質の高い試合」と評価している。

 ルールだけでなく、手の握り方や角度など、細かい部分も監修した。「枢先生は細かい修正にもきちんと応じてくれた。クリケットを描かせたら世界一の作家さんだと思う。クリケットまた描いてくれないかなぁ」と熱望する。

 実際のクリケットだと試合時間が長いことから、作品では特別ルールを設けた。クリケットは、紳士としての人格形成やふるまいを育てる学校で行われていたスポーツなので「ひきょうな方法で勝つのはダメです」と言ったという。

 作中では、あまり紳士的でない勝ち方をするシーンもあるが、「先生側から『宮地さんは嫌だっていうと思うのですが』と相談され、キャラクター設定も考慮すると、納得できました」という。宮地さんが目をつぶったシーンはぜひ原作を読んで確認してもらいたい。

 宮地さんは、アニメ化に当たっての監修も担当している。アニメ化の話を聞いたときの喜びを、「クリケットがオリンピックの種目入りを果たしたときと同じくらいうれしかった」と冗談めかして話してくれた。

 インターネットなどでファンの反応も確認しているという宮地さん。「アニメ化をきっかけとして、ファンの皆さんが実際に試合を見てみたいと思ってくれたらうれしい。佐野市国際クリケット場のカフェでは紅茶や軽食、おいしいミートパイも食べられますよ」と意味ありげに笑った。佐野市が黒執事の聖地の一つとして認知される日も近いかもしれない。

 ◆黒執事

 2006年からスクウェア・エニックスの月刊「Gファンタジー」に連載中。2008年からアニメ化され、「寄宿学校編」で6作目となる。2014年に水嶋(みずしま)ヒロさん主演で実写化された。

 ◆放送情報

 黒執事寄宿学校編は4月13日午後11時半から、とちぎテレビ、TOKYO MX、群馬テレビ、BS11、MBSなどの放送局で放映される。

ポスターの手の角度を確認する宮地さん
おすすめのミートパイを持ってカフェの前に立つ宮地さん

© 株式会社下野新聞社