「ぽっちゃり体型」で何が悪いの? 管理栄養士が健康のために伝えたいこと

太っているのは悪いことでしょうか? 人の見た目をとやかく言う「ルッキズム」の問題などもありますが、健康を考えると注意すべき点もあります。

Q. 太っているのは悪いことですか? 体型について色々言われたくありません

Q. 「太っていることは悪いことのように言われますが、最近はどんな体型も肯定されるべきだという流れがあると思います。 ルッキズムの問題や、ボディポジティブの流れを考えると、肥満体型もそのままでいいように思いますし、人から『やせた方がいいんじゃない?』などと言われるのは、正直不快です。 迷惑をかけているわけでもないのに、何か問題はあるのでしょうか?」

A. 命にかかわる病気のリスクが上がります。健康のためには適正な体重維持を

たしかに、どんな体型もそれぞれの個性としてポジティブに捉えるのは素敵なことですし、見た目を気にしすぎて極端な「やせ体型」を目指したりすることは間違っています。 しかし一方で、医学的な「肥満」に該当する体型は、メタボリックシンドロームにつながり、高血圧や糖尿病、脂質異常症などのリスクが高いということも事実です。 筆者は以前、病院で患者さんからの栄養相談を受けていましたが、肥満で医師から指導をされた方からは、「困っていることがないのに、どうして治療が必要なのか」と質問されることがありました。 肥満を放置してはいけないのは、上に挙げたような病気が進行し、重症度が増していくと、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる深刻な状態を引き起こしてしまうからです。 最近の研究では、肥満によって、がんや認知症、うつ病など、その他のさまざまな病気のリスクも上がることが報告されています。 多くの「肥満」自体は、外科治療や薬物治療が必要な病気とは異なり、日常生活のちょっとした「クセ」を変えることで、改善することができます。 例えば食事なら、時間を決めてだらだら食べないようにする、栄養のバランスのとれた食事を食べる、少ない量でも満足がいくように噛む回数を増やすなど、ちょっとした工夫を取り入れていけばいいのです。 食生活や運動習慣をいっぺんに改善するのは難しいと思いますが、無理のないことから少しずつ改善していくことはできるはずです。 見た目の問題ではなく、自分自身の心身の健康を守るためだと考えて、少しずつ変えていくのがいいでしょう。

平井 千里プロフィール

メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。 (文:平井 千里(管理栄養士))

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