礼儀正しい「息子の妻」から2日に1度LINEが…64歳女性が「うっとうしい」と感じる理由

記念日にイベント開催をもちかけてきたり、スポーツすることを過剰に心配してきたりする息子の嫁。仕事のできる女性なのでそこは抜かりなく、人柄も本当にやさしいのだとも思うが、そういうのがうっとおしいと思うタイプの人間もいる。

昔でいう「嫁姑問題」は、形を変えて今も続いている。ただ、義母世代が戦後産まれとなっている今、「礼儀正しい、いい嫁といえるはずの若い女性」を「めんどうだな」と思う人も増えているようだ。

64歳、息子の妻にモヤモヤ

「息子が結婚したのは10年も前の話。ずっと自宅住まいだったから、結婚すると出て行ったとき、ホッとしたんですよ。これで夫とふたりでのんきに暮らせると」 そう言って苦笑するのはサキコさん(64歳)だ。大学時代から付き合っていたサキコさんと恋人が結婚したのは25歳のとき。いずれ結婚するつもりではいたが、思いがけなく妊娠がわかって踏み切った。 「26歳で産んだ長男が27歳で結婚したんです。29歳で産んだ長女は今も独身ですが、彼女は就職と同時に独立していった。私たち夫婦はずっと共働きだったし、ふたりとも70歳まで働くのを目標にしてきたから、孫の世話はできないからねと長男には言っておいたんです」 長男の妻はふたつ年上。仕事のできる女性ということで、夫の実家への気遣いも抜かりはなかった。

記念日大好きな「息子の妻」からLINEが届く

「なんだか知らないけど記念日が好きな人なんですよ。夫と私の誕生日も把握していて、誕生パーティをしようとか、年に1度はみんなで家族旅行をしましょうとか。 いろいろ提案してくれるのはありがたいけど、私たちは20代から30代を仕事と子育てだけで過ごしてきたから、とにかくふたりで遊びたい(笑)」 今度の日曜日、みんなで食事に行きませんかと、息子の妻からLINEがくるたび、サキコさんは怯えてしまうと笑った。 「私はがさつな女だから、ごめんね、週末は夫とふたりで遊びたいの。今週は久々にテニスをしようと思ってと言ったら、『テニスなんてやめてください、ケガしたらどうするんですか』って。私は若いときからやってるのよと言うと、『でもお年ですから』って。悪気はないんだろうけどおもしろくはないですよ」 もちろん、「はいはい、テニスはやめて映画に行くわ」と言ったものの、もちろんテニスをしましたよとサキコさん。 「心配してくれるのはありがたいけど、必要以上に年寄り扱いされるのも嫌なんですよ。だってこっちだって社会人の現役だもの。仕事を引退したとしても、自分たちの趣味や行動を阻止されるのは耐えられない」 息子に直訴しようかとも思ったが、息子の妻はよかれと思ってくれているのだからと彼女は自制した。 だが、抑えつけられるのをなにより嫌う夫は、その次にサイクリングを阻止しようとした息子の妻に「オレたちのことは放っておいてくれないか」と言ってしまった。彼女は驚いて泣きだしたという。

長文の手紙に書き綴られていた気持ち

その後、息子に対して「ありがたいけど好きにさせてほしい」と夫婦は伝えた。それでお互いにいい距離がとれるだろうと思っていたら、ある日、息子の妻から長文の手紙が届いた。 「行動を阻止するつもりはないこと、とにかくふたりの健康が心配なことなどがつらつらと便せん10枚くらいに書かれていた。これってハガキですむよねと夫と笑ったんですが、これは彼女の情が深いのか、あるいは粘着質なのかと夫と話しました。 子どもだって別人格というのが、私たち夫婦の子育ての共通認識だったから、息子の妻とももっとさらりと付き合いたい。それだけなんですよ」 お互いの時間の都合がついて、なんとなくタイミングが合ったときに会えればそれでいい。わざわざ記念日に集まる必要もない。いくつになってもよほど困ったことがあれば相談に来ればいい。親が子を頼ることはないと思え。 そう言いながらふたりは子どもたちを育てたのだ。彼らは彼らの人生を歩んでくれればいい。 「私たちのどちらかが病気になったりしたときは、必然的に助けを求めるかもしれません。でもなるべくそういうことがないよう、仕事を引退したら暮らし方を考えようと話し合っているんです。 財産もないから何も残せない代わりに、面倒をかけるようなことはしない、つもり。それでいいんじゃないですか」

2日に1度は届く、LINEの内容

今でも安否確認のつもりなのだろう。2日に1度は息子の妻からLINEがくるが、サキコさんはスタンプを返して終えている。 それを彼女が寂しがっていると息子から聞いてはいるが、「どうせなら友だちとLINEで盛り上がったほうが楽しいわ」とサキコさんは考えているそうだ。 「優しいのはわかるけど、優しくすればすべての人が喜ぶわけではないんですよね。それを言葉は悪いけどうっとうしいと考える、私たち夫婦のようなひねくれ者もいるわけ。そこをわかってほしいんですけど……。私たちがわがままなのかしら」 うーん、とサキコさんは考え込んだ。優しさを投げた側は、それを必ず理想通りに受け止めてほしいと過大な期待をしてはいけないのかもしれない。受け取る側にも事情がある。優しさが最高の愛情とは限らないのだ。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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