船と岸壁を結ぶ紙テープで別れを惜しむ-。教職員らの異動時期に鹿児島県・奄美航路で親しまれてきた風物詩が、新型コロナウイルス感染症の5類移行後も見られなくなりそうだ。
港湾管理者の県は今年、鹿児島新港(鹿児島市)と名瀬港(奄美市)について、岸壁での見送り禁止を決めた。2020年以降、新型コロナ感染拡大防止を理由に禁じてきたが「事故防止が第一。見送るスペースを新たに設けるなどの対策をしたので、安全面からも岸壁には出ないで」と呼びかける。
県などによると、岸壁は関係者以外は原則立ち入り禁止。異動時期の数日間に限り、県が港湾関係者に協力を依頼した上で、見送りを認めてきた。19年までは岸壁に児童生徒や保護者らが多く訪れ、色とりどりの紙テープが舞っており、鹿児島新港では多い時は1日1000人以上が集まっていた。
岸壁はフォークリフトが頻繁に行き交い、22年には荷役作業員の死亡事故も発生している。これまで見送り時は規制線などでスペースを確保していたが誘導に従わない客がいた。マルエーフェリーの宮園登玄総務部長は「ヒヤリとしたことは多い。近年は人手も足りず安全確保が難しくなっていた」と明かす。
県は22年、鹿児島新港ターミナルにスカイデッキとは他に見送りができるスペースを新設した。コロナの5類移行後初の異動時期を前に県や同社、マリックスラインはホームページなどで岸壁利用禁止を通知している。県港湾空港課の佐多悦成課長は「旅客の安全性や荷役作業の効率性向上を図るためにも協力してほしい」と話した。