小林製薬の機能性表示食品回収問題、制度の課題浮き彫りに

 22日に発覚した小林製薬の機能性表示食品の健康被害、および自主回収の問題は、制度的に「第3の健康食品」と言われる、この分類の安全性への懸念が現実化してしまったものとして深刻な事態だ。この問題の行方によっては、機能性表示制度そのものの存在意義が問われる可能性がある。

国の審査が不要な機能性表示制度の問題とは

 医薬品でも医薬部外品でもない、食品に分類される健康増進目的の商品については、「特定保健用食品(通称トクホ)」「栄養機能食品」、そして今回健康被害が発生した商品が適用されていた「機能性表示食品」の3つがある。前二制度は機能性や安全性について国が審査するが、実は「機能性表示食品」についてはメーカーがその責任で効果について独自に表示でき、国はその内容について審査しない。つまり不正表示がされていても検証しづらいという問題、さらに安全性については事実上なんの検証もされていないという根本的な問題が存在するのだ。これらの問題については、制度創設当初から専門家の間では懸念を示されていたものでもある。

広告表示にも優良誤認多数?

 この問題については、別の側面の問題も指摘されている。機能性表示食品の広告表示において「優良誤認」、つまり実際より効果があるかのように誤認させるような表現が多数疑われると指摘する論文が、先日日本の研究グループから発表されているのだ。国内8つの医療機関の研究者からなるグループが、機能性表示食品に関する臨床試験、およびその試験を受けたと思われる商品の広告それぞれの内容を調べたところ、論文の8割超、広告は7割超で優良誤認の疑いが認められたという。しかも調査したのは全体の一握りで、研究グループもその深刻さに警鐘を発している。

 企業にとって機能性表示食品は、国の審査がないことで参入しやすい状況になっており、近年商品数が増え、テレビCMでも多く宣伝されるようになった。しかしこのカテゴリの食品が、健康効果を提示しているにもかかわらず第三者の検証がない、ある意味「言ったもの勝ち」の状況になっていることを知っている消費者はほとんどいないだろう。今回の健康被害発生のニュースは個別の事案ではなく、この制度事態が持つ懸念が顕在化したに過ぎないとも言える。

© 合同会社ソシオタンク