「壁の傷よりも人の命を大事に」賃貸住宅でも家具固定はできるのか…春の引っ越しシーズン やっておきたい地震対策

3月12日、県が発表した調査結果です。「家具類の固定をしていますか?」という質問に対し「大部分固定している」と答えた人は3割弱。残りの7割は「固定できていない家具がある」と答えています。この春からの新生活でぜひ、やっておきたい地震対策ですが、家具の固定には「できない理由」があるようです。

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地震対策の実例を紹介する、静岡市葵区の静岡県地震防災センターです。

<杉本真子アナウンサー>
「地震が起こった時に家具の転倒防止のために、やっておくと良いことはありますか」
<地震防災アドバイザー 深澤良子さん>
「この棚を壁に固定する、L字金具での固定になります。壁の強いところにネジで留めることになります」
<杉本真子アナウンサー>
「壁に直接、打ち付けている?」
<地震防災アドバイザー 深澤良子さん>
「そうですね、そうなります」

食器棚や冷蔵庫など、背が高くて重い家具を固定するには最も効果がある対策ですが、この方法だと壁に穴があいてしまいます。

固定していない家具がある理由の一つ「賃貸住宅」だから

静岡県の調査で、固定していない家具がある理由を聞いたところ、3番目に多い回答が「賃貸住宅」だからでした。固定したくても穴を開けられないという理由です。

実際に賃貸のアパートなどでは家具の固定ができないのか。不動産会社に聞いたところ、「くぎなどを使用して固定すると退去する際、修理費用を請求される場合がある」「管理会社や家主の承諾を得て欲しい」と回答がありました。

地震の多発国で「人の命」より「壁の傷」が大事なのか

<兵庫県立大学大学院 あんどうりすさん>
「地震が多発する国で人の命より壁の傷をいつまでも気にしていてもいいのか」

3月16日、東京大学で開かれた日本災害情報学会、災害情報の専門家による研究発表会です。

兵庫県立大学大学院のあんどうさんは、家具の転倒防止対策の重要性に理解がある「防災士」の資格を持つ人にアンケート調査を行い、賃貸住宅に住む67人と大家さんの26人から回答を得ました。

賃貸住宅に住む防災士に「原状回復義務を負わないなら家具を固定する意欲は高まりますか?」と聞いたところ、ほぼ全ての人が「高まる」と答えました。

防災士でも「大家さん」は事情が違う!?

ところが、同じ防災士でも大家さんは事情が違います。「貸している物件に家具を固定しやすい工夫をしていますか?」と聞いたところ、「工夫していない」または「管理会社任せ」といった実態が浮かび上がりました。

<兵庫県立大学大学院 あんどうりすさん>
「重要性の啓発とか、壁に穴をあけない方法の周知は、いままでは家を借りる人に言ってきましたが、大家さんや管理会社に対して、原状回復義務を免除したら補助金が出るとか、そういった方向性のターゲットチェンジをすることで家具の転倒防止対策が推進できるのではないか」

自治体によっては、公営住宅では、家具の固定による原状回復義務を免除するケースが増えてきているといいます。

<兵庫県立大学大学院 あんどうりすさん>
「壁の傷よりも人の命を大事にする、そういった政策になればいいなと思っています」

原状回復義務を免除するケースも増えつつあるが・・・

しかし、現状では壁に穴を開けられる民間の物件はあまりありません。突っ張り棒や棚などの下に敷くストッパー、粘着マットなどを使うのが一般的ですが、こうしたものでも、L字金具と同じくらいの強度を上げる方法があるといいます。

<地震防災アドバイザー 深澤良子さん>
「ポール式、ストッパー、粘着マット等は効果が小さいものになります。ただし、これを組み合わせて使っていただくことで効果を確保することも可能ですので、ぜひ組み合わせてお使いいただきたいと思います」
Q.組み合わせることで同じような強度を確保できる?
「同等ぐらいの強度を確保できるかと思います」

静岡県地震防災センターには、粘着マットの強さを確かめられる模型が置いてありますが、力いっぱい揺らしてもしっかりと粘着していました。こうした便利な道具はホームセンターなどで買えます。上手に組み合わせて、家具の地震対策を進めましょう。

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