【10年ひと昔の新車】ベントレー コンチネンタルGTは、まさに「真のグランドツーリングカー」だった

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ベントレー コンチネンタルGTだ。

ベントレー コンチネンタルGT(2代目:2012年)

2代目にフルモデルチェンジされたとはいえ、スタイリングは先代の正常進化版といった感じ。電動開閉ソフトトップを備えたGTCも設定された。

2010年に2代目にフルモデルチェンジし、日本にも昨年(編集部註:2011年)に導入されたベントレー コンチネンタルGTにようやく試乗する機会を得た。本体車両価格が税込み2415万円、さらにオプションの総額が352万4200円で、合計2767万4200円ナリ! オプションだけで、余裕でクルマがもう1台買えてしまうほど豪勢なクルマだから、乗り出す前からテンションが上がってしまう。

しかし、ここ2〜3年(編集部註:2012年の時点)で都内ではベントレーをよく見かけるようになった。価格はともかくとして、コンチネンタルGTやオープンモデルのGTC、それにサルーンのフライングスパーが登場してから、グッと身近なブランドになったからだろう。もちろん、価格の話は別として、あくまでクルマの性格としてではあるが。

VWグループ傘下となり、VWの旗艦フェートンと共有パーツを使うことで、壊れない&扱いやすいといった性能を手に入れたおかげで、比較的手が出しやすい存在になったのだろう。21世紀も10年を過ぎた現代(編集部註:2012年)の高級車は、トラブルもまた味わいなどとは言っていられないし、この手のクルマを所有する裕福なオーナーほどトラブルは嫌う。販売実績を見ても、この方向性は正解だったということだろう。

実際に試乗すると「ああ、GTカーって、こういうものなんだな」と納得させられてしまうほど、気楽に乗れてしまう。どこまでもツーリングしたくなるほど快適なのは、シートにマッサージ機能やヒーター&ベンチレーターが付いているからだけではなく、どんな状況でも即対応できるポテンシャルを持っているからだ。

本来ならば、第1段階は120km/h、第2段階は242km/hで下がる車高や、145km/h以上で上がり103km/h以下で下がるリアスポイラーの設定を見ても、もっと高速域でツーリングするクルマなのだが、日本の交通事情ではそうはいかない。まあ、それを言い始めたら、アクセルペダルを床いっぱい踏み込んでW12ツインターボエンジンを全開にし続けるといったシーンもないのだが。

狭角V6をふたつ合わせた独特のW12気筒エンジンにツインターボを装着し、575ps/700Nmを発生。6速ATを介してフルタイムで4輪を駆動する。

ベントレーは、やはり自分で操るドライバーズカーだった

リアウインドー下のスポイラーを上げて(マニュアルで操作可能)高速ツーリング。GTカーらしく、どこまでも突き進んで走る印象だ。

サスペンションは4段階の可変式で、路面の悪い街中でもコンフォートポジションではソフトすぎるくらいで、ノーマルポジションでも十分心地良くいなされてしまう。シート調整幅も大きいので、小柄な人が運転してもドライビングポジションは問題なく決められる。2m近い、かなり広めの全幅だが意外と気にならず、思ったより気軽に?高級車の世界観を味わえる。

ちなみに、けっこう路面の悪いところを走るときは、車高を上げることもできる。とはいえ、このクルマでそんな悪路を走る人はまずいないと思われるが・・・。以前、雪上試乗会を開催したこともあるベントレーだが、AWDのおかげで安定性も高く、楽勝で普段使いできる、気さくで懐の深いGTカーだ。

もちろん、そのパフォーマンスを堪能したいのなら、「スポーツ2」ポジションという硬めの足まわりに、ESCの干渉が少ない「ダイナミック」モードをチョイスする、なんていう高速コーナリング仕様も備えている。つまりGT=グランドツーリングの名が示すとおり、乗せてもらうショーファーカーではなく、あくまで自分で操るスタイル。だが、誰でも乗りこなせてしまうほどクセがなさ過ぎるのが、逆にこのようなブランド車だと、好みの分かれるところなのかもしれない。

それでも、内装はいたって個性的! 試乗車のバーズアイメープルのウッドパネルは、個人的にもすごく気に入ってしまった。インパネにはブライトリングの時計も備わり、ダイヤモンドキルトステッチ入りの本革シートの雰囲気も最高。こんな超高級車を転がせる身分に一度はなってみたい・・・と後ろ髪を引かれながら、コンチネンタルGTから降りたのだった。

バーズアイメープルのウッドパネルをふんだんに使ったゴージャスなインパネ。もちろん快適装備も満載している。

●全長×全幅×全高:4820×1945×1410mm
●ホイールベース:2745mm
●車両重量:2320kg
●エンジン:W12 DOHCツインターボ
●総排気量:5998cc
●最高出力:423kW(575ps)/6000rpm
●最大トルク:700Nm(71.4㎏m)/1700rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●EU総合燃費:6.1km/L
●タイヤサイズ:275/40ZR20
●当時の車両価格(税込):2415万円

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