7歳で大河や朝ドラ出演の子役・池村碧彩「堺雅人さん、麻生久美子さんはすっごく優しくて」大先輩たちの見習いたい部分

池村碧彩 撮影/三浦龍司

愛くるしい笑顔で観るものをときめかせる子役・池村碧彩さん。2021年に『シナぷしゅ』のオープニング&エンディングに登場すると、一生懸命なダンスに子育て世代がノックアウトされ、同年放送のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』、そして2023年には『どうする家康』に出演するなど、いまもっとも躍進する子役のひとりといえる。そんな池村さんのTHE CHANGEとは。【第3回/全3回】

軽く巻かれたボブカットにカチューシャ、ふわふわとしたピンクのチュールスカートがこれ以上ないくらい似合っている。小さな歩幅で取材部屋の中央まで歩くと、「お願いします」とていねいに頭を下げる。その瞬間、その場にいる大人たち全員が相好を崩す。

「先に写真撮影をしていいですか?」と聞くと、「はい」とうなずき、自分のほっぺを両手でペチン! と叩く。

ーーいまのはなんのペチン! ですか?

「うーん、わかんない“ペチン”」

無意識にスイッチを入れたのだろう、2019年より活動を開始し、すでにNHK大河ドラマやNHK連続テレビ小説、CMにミュージカルにと活躍する池村さんならではの、プロとしてのルーティンを思わせる。

これまでさまざまな出演遍歴を持つ池村さんだが、声優を務める3月15日より全国公開の映画『FLY!/フライ!』では、子ガモのグウェンを演じ、その父親マックを堺雅人さんが、母親パムを麻生久美子さんが演じている。

「堺さんはすっごく優しくしてくれて、私が緊張していると“ここ、言っていいよ”とか、“ここはこうしていいよ”とかいっぱいおしゃべりしてくれて。おかげで、全然緊張しないでできるようになりました。麻生さんはすっごくすっごく優しくて! ファンになりました」

ーーファンになったんですね! 麻生さんのどんなところに惹かれたのでしょうか。

「すごく元気で、楽しいことがあると“楽しい”と言っていて、すっごく表情が豊かでとてもすてきでした。私も麻生さんのように、表情が豊かになりたいなと思って、すごくワクワクしました」

作中でも麻生さん演じる母ガモのパムは、豊かな感性で家族をまだ見ぬ世界へと引っ張る役割を担う。子ガモのグウェンは好奇心旺盛に両親と兄に並び、刺激に満ちた旅をする。

「ハラハラドキドキする場面もあるんです。人間に食べられそうなときに、みんなで協力して、こうやって、こうやって、脱出みたいなことをするところが、すごく、“捕まっちゃうかな? 捕まらないかな?”って、ほんとうにハラハラドキドキしました」

ーーそのドキドキが声に表れているんですね。

「はい、もうほんとうに楽しかった! 特に好きな場面は、ダンおじさんっていう親戚のカモに別れのキスをするシーン。“んまっんまっ”ってするのが、とてもかわいいんです」

プライベートで「はじめてのおつかい」を経験

ーーたいへんだったシーンはありますか?

「ダンおじさんに“プリーーーーーーーーーーーーズ!”ってお願いするシーンがあるんですけど、その息を吸うのがたいへんでした。何回もチャレンジしたんです」

同作は"冒険”がテーマのひとつ。カモの一家が棲む小さな池の外は「危険がいっぱい」だと言い聞かせ、池の中で安心・安全な一生をすごすことを「幸せ」とするマックに対し、パムと兄のダックス、グウェンは外の世界への憧れを熱心に訴える。そして、マックに旅に出る決意をさせるところから、物語は始まる。

池村碧彩 撮影/三浦龍司

一家の初めてづくしの旅は大冒険そのもので、観客は何度もおとずれる息を呑む展開に手に汗握るはずだ。グウェンを演じた池村碧彩さんに、私生活での冒険歴を尋ねると、7歳にしてすでに「冒険したことがあります」と話す。

「はじめてのおつかいをしたことがあって、それはおばあちゃんの家だったんですけど。ずっときょろきょろしてて、“ここって通るんだっけ? 通らないんだっけ?”ってなって、道端の人に、“すいません、ここって通ればいけるんですか? それとも行けないんですか?”って聞いて。“こっちに行ったら見えてくるよ”って言われて」

それは、幼稚園に通っていたころのこと。家族分のアイスを買うミッションを課せられたという。『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)にプライベートで挑戦したのだ。

「ドキドキしながら歩いていました。それで、ちらっと後ろを見たら、おじいちゃんがいたんです。こうやって(建物の影から顔をのぞかせる動きをして)チラチラーって見てて」

ーー後ろから見守ってくれていたんですね。

「うん。おじいちゃんの姿が見えたら、“わーーー!”ってびっくりして、それでちょっと安心しました。おじいちゃんは私がアイスを買ったあと、自分のぶんのアイスを自分のお金で買っていました」

ポジティブでいられる理由

唐突に聞いた冒険歴を、わかりやすく、そして臨場感たっぷりに明るく話してくれる池村さん。ほんの数十分の思い出をまぶしいほどの笑顔で話す様子は、豊かな感受性の現れだろう。思わず、「ほんとうに明るいですね」と伝えると、「はい!」と元気のよい返事。

「いつもほんとうに明るくて、ポジティブです。いろいろなことがあってもだいじょうぶ! って思っています」

2歳からスポットライトを浴び、台本を覚え、期待に応えるべく大人数の大人に囲まれて仕事をするプレッシャーは想像を絶するものだろう。並大抵の精神力では続けられない子役という仕事とポジティブに向き合えるすべを聞くやいなや、こんな答えが返ってきた。

「失敗は成功の素! あと、私は空手を習っているんですけど、空手でストレスを発散しています。イヤだなあと思ったこと、それを全部集めてキック! ってやったら、もうワーーーッと出ていきます」

池村碧彩 撮影/三浦龍司

シンプルながら、いちばん効果的であろうストレス発散方法。余計なことばかりをあれこれ考えてしまう大人こそ、池村さんに倣って試したい。

池村碧彩(いけむら・あおい)
2016年5月10日生まれ、東京都出身。2019年より活動を始め、2021年放送のNHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』でヒロイン百音の幼少期を演じ知名度が全国区に。2023年放送NHK大河ドラマ『どうする家康』では徳川家康の長女・亀姫を演じ、同年3月にはミュージカル『SPY×FAMILY』でアーニャ・フォージャー役に抜擢。さらに3月15日(金)より全国公開の映画『FLY!/フライ!』では声優に初挑戦し、各方面で活躍中。

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