SUPER EIGHT・丸山隆平「自分の経験を拡張していきたい」 演劇人として欲する“場数”

SUPER EIGHT・丸山隆平 クランクイン! 写真:高野広美

SUPER EIGHT(旧関ジャニ∞)丸山隆平が国民的人気タレントと人気アーティストの熱愛疑惑を追う芸能記者・菅原裕一役で主演を務める舞台、Bunkamura Production 2024『ハザカイキ』。グループ名を改め、夏にはオリジナルアルバムを発売、アリーナツアー&ドームツアーも予定されているなど、グループでの活動も活発となっているデビュー20周年の今年、丸山は「自分の経験を再拡張していきたい」と俳優としての自分も見つめる。丸山が本作に懸ける想いとは…。

◆芸能記者役挑戦は「霧の中を探るような感覚」

丸山が主演する舞台、Bunkamura Production 2024『ハザカイキ』は、作・演出を手がける三浦大輔が、2021年上演の『物語なき、この世界。』以来3年ぶりに発表する新作舞台。芸能界を舞台に、マスコミとタレントという特殊な関係の中で、時代に振り回されながら葛藤し続ける人々の揺らぎを会話劇として展開する。

丸山は本作、そして三浦作品の魅力を「出てくる登場人物が皆さん、ろくでなしというところ(が魅力)。ろくでなしたちが現代という檻の中で必死にもがいて、自分の中の小さな革命を起こそうとしている。三浦さんの作品ではそんな人物が描かれるところが多い」と話す。

「自分の中に菅原と共通する部分があれば、それを広げていければと考えています。三浦さんのろくでなし感を探りながら、役の中に投影できればと。台本がめっちゃ面白いんですよ。すごくエンタメに富んでいる群像劇になっています。それぞれ自分の中のろくでもない部分をどう打開するか、そこから最後まで逃げ切れるのか。どの人物もしっかりと描かれているので、世代関係なく楽しんでいただける作品になると思います」。

今回は芸能記者という役どころとなるが、「撮られる側の気持ちはめちゃくちゃ分かるのですが、撮る側の気持ちは分からない。一つの職業として、霧の中を探るような感覚があります」と苦笑い。一方で、「撮る側の心情や撮られる側の心情というのは、もちろんこの作品の中で欠かせない要素だと思いますが、それ以上に大事なのは、アクションを起こしたことで人にどのような影響を及ぼすのか。影響を受けた人物がどんなメンタルになり、どんな選択をするのかだと思います。仕掛けた側も仕掛けられた側も、何かしら摩擦が起こるので、そうした人間の心理がどう変わって、どう終わるのかをライブ感とともに楽しんでいただけたらいいなと思います」と言及した。

◆本作は「今の世の中に対しての辛辣なことを言いたい舞台ではない」

本作のタイトル「ハザカイキ」は、端境期、つまり物事の入れ替わりの時期を表す言葉だ。

「三浦さんが、時代がどんどん変化していき、そのスピードにみんな追いついていないのに情報を詰め込んでいるというお話をされていました。何が分岐点で何が転機なのかも分からなくなり、ジャーナリズムと一般人の誹謗中傷との狭間がどんどんなくなってきたと。確かに、情報が多すぎて、本当に知りたい情報も分からなくなってきていますよね。僕もSNSで情報を取り入れた方が手軽だから、新聞ではなくSNSを見てしまうんですが、どこまでが本当か分からないと思う時もあります。便利だからこそ自分の目で見て、自分が体感したことを信じていかなくてはいけないなと思います。(本作を通して)そうした時代の狭間になっていますよ、と警鐘を鳴らされているような気がします」。

とはいえ、作品としては「もっとエンタメで人間ドラマとして観てもらいたい」とも話す。

「三浦さんとも『今の世の中に対しての辛辣なことを言いたい舞台ではない』という気持ちでやりたいという話は共有しているので、リアリティを体感しながらも、身近な人を大事にできるような舞台になるんじゃないかなと思います」。

◆演劇人として欲する「場数」

SUPER EIGHTとしての活躍もさることながら、近年はコンスタントに舞台に出演し、俳優としての立場も確立する丸山。これまでの俳優経験で得たものは「場数」だと振り返る。しかしまた、今後、俳優として得たいものも「場数」という。

「僕は演劇人としては場数が全然足りていないんですよ。恵まれていることに、これまで主演しかやらせてもらっていないのですが、それはある意味では不幸でもあると思っています。“受け”しか知らないんです。主演としてできることもありますが、二番手、三番手だからこそ見られる景色もある。そういう意味でも、場数が欲しい。それから、毎回、演目が変わればゼロからのスタート。この間、これがうまくいったから今回もうまくいくなんて甘いもんじゃない。それくらい、毎回変わるので、とにかく場数と経験が必要だと思います。今回も場数がいただけますし、稽古期間もいただけるので、自分の全てを引き出して、何ができて何ができないのかをもう一回確認し、自分の経験を拡張していきたいと思っています」。

言葉の端々から、丸山の本作への真摯な思いが伝わってきた。最後に「もしも、芸能記者になったら?」と質問すると、「長い時間、待てないので向いてない」と笑いながら答えてくれた。

「例えば、ラーメン屋さんを調べて行こうとするんですが、みんながいいと言うところに行ったとしても味の保証がない。その人たちの舌と僕の舌が合うか分からないから、そのお店が美味しいか分からないじゃないですか。分からないのに並ぶのは耐えられないんですよ。自分の行きつけで、ここは絶対に裏切らないというところに並ぶのはいいんです。記者の方もきっと同じで、撮れるかどうかも分からないのにずっと張り込んで待たなくてはいけない。それが僕には無理ですね」。

劇中で、丸山はどのような芸能記者を作り上げるのか。期待が高まる。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)

Bunkamura Production 2024『ハザカイキ』は、3月31日~4月22日に東京・THEATER MILANO‐Za、4月27日~5月6日に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演。

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