【3月24日付社説】浪江の学園都市構想/エフレイ効果の最大化図れ

 浪江町は、福島国際研究教育機構(エフレイ)の設置に対応する新たな都市像として「浪江国際研究学園都市構想」をまとめた。期間は新年度から10年間で、エフレイ周辺に飲食や芸術、文化などの都市サービスを供給する施設を集約する計画になっている。

 浪江町は構想のビジョンに、エフレイや研究機関、浜通りの自治体などを「多様な主体」と定義して、それぞれが支え合い持続可能なまちづくりを実現することを掲げている。支え合いによる連携が加速すれば広範囲に及ぶ産業創出などが早期に実現し、結果的に立地町である浪江町のさらなる地域再生にも結びつくという考えだ。

 東日本大震災からの復興においては、それぞれの自治体が地域再生を競うような状況にあり、時に地域の分断にもつながってきた経緯がある。浪江町が今回の構想で、エフレイが本県全体の復興の司令塔として期待されていることを踏まえ、他の自治体の発展も見据えた広域連携の必要性を改めて提唱したのは評価に値する。

 構想では、町内の川添地区に建設されるエフレイ本施設周辺を「タウンセンター」、JR浪江駅周辺を「キャンパスタウン」、その他の町内を「郊外拠点」に位置づける。駅周辺に公営住宅や交流施設、スーパーマーケットなどが入る商業施設を整備する市街地再開発と併せ、エフレイを核とした新たなまちづくりを進める。

 これまでの福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の施設は地域と切り離された環境にあり、住民が成果を実感しにくい一因となっていた。浪江町にはエフレイの施設整備と市街地再開発が同時期となる好機を生かし、移住定住や産業集積が目に見えて分かる、地域と一体感のある都市空間を実現してほしい。

 エフレイ設置の効果を引き出していくための環境整備として、構想では東京や仙台などの大都市と浜通りを結ぶ電車やバスの利便性向上、近距離を移動するカーシェアを含めた交通アクセスの充実を求めている。また、人材育成の面では、県立高校の再開やインターナショナルスクールなどの誘致も必要になるとも指摘している。

 交通アクセスの充実などは浜通りの共通課題で、進まなければ海外も含め多くの研究者をエフレイに呼び込む際の弱点になる可能性がある。エフレイの計画では、2029年度までに約500人の研究者が集まる。自治体や県が歩調を合わせ、国や民間企業に規制緩和や交通ダイヤの改正などを粘り強く訴えていくことが重要だ。

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